請求人による修正申告書の提出は、自発的な決意を有していたことが客観的に明らかであるから、更正があるべきことを予知してなされたものではないとした事例
裁決事例(国税不服審判所)
2011/05/11 [租税特別措置法][登録免許税法の特例]《ポイント》 この事例は、元事務員による給与支給額の水増しを把握した請求人が、原処分庁に事前説明に赴いたことを契機として税務調査がされ、修正申告に至ったことについて、請求人の具体的な事前説明に、請求人が自発的に修正申告を提出する決意を有していたと認めることができると判断して、加算税の賦課決定処分を取り消したものである。
《要旨》 原処分庁は、本件修正申告書は、調査において調査担当職員が請求人の元事務員による給料支給額の水増し(本件水増し)を確認した結果判明した横領の事実に基づき提出されたものであり、また、調査に先立つ事前説明時には請求人が横領の事実を確定的に認識していたとは認められず自発的に提出されたものではないから、国税通則法第65条《過少申告加算税》第5項に規定する「調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないとき」には該当しない旨主張する。
しかしながら、請求人は、少なくとも事前説明時までに本件水増しのすべてを把握して修正申告をする決意をし、事前説明の際には面談職員らに対して本件水増しについて説明した上で調査を求めており、それに基づいて調査が行われたと認められることから、請求人は自発的に修正申告書を提出する決意を有しており、その決意は事前説明において客観的に明らかになったものということができる。そうすると、本件修正申告書の提出は、調査があったことにより更正があるべきことを予知してされた修正申告書の提出には当たらない。
《参照条文等》 国税通則法第65条第5項
- 国税不服審判所:公表裁決事例集:公表裁決事例要旨
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