期限後に提出された申告書は還付請求申告書に該当するので、更正処分により賦課すべき加算税は過少申告加算税になるとして無申告加算税の賦課決定処分の一部を取り消した事例
裁決事例(国税不服審判所)
2000/10/10 [租税特別措置法][登録免許税法の特例] 書類の提出等に係る効力の発生時期については、一般には、その書類が税務官庁へ到達した時(いわゆる到達主義)に効力が生ずると解されるところ(民法第97条第1項参照)、納税申告書については、郵便事情等を考慮し、また、納税者と関係税務官庁との地理的間隔の差異に基づく不公平を是正するために、到達主義の例外として、国税通則法第22条で、「納税申告書が郵便により提出された場合には、その郵便物の通信日付印により表示された日にその提出がされたものとみなす。」と規定されているものである。
請求人は、通信日付印が平成12年3月16日であったとしても、同月15日中に郵便ポストに投かんしたものを期限内申告書として取り扱わないのは不合理である旨主張するが、一方で、本件封筒には平成12年3月16日の通信日付印が押印されることを知っており、さらに、国税通則法第22条の規定により、本件申告書が通信日付印の日である平成12年3月16日提出されたものとみなされることを知りながら、本件申告書を本件郵便ポストに投かんしたと認められる。また、当該郵便局では、平成12年3月15日及び同月16日において、平常どおりの業務が行われており、誤って同日の通信日付印が押印された事実は認められない。
そうすると、本件申告書は、国税通則法第22条の規定により、本件封筒の通信日付印により表示された平成12年3月16日に提出されたものとみなすのが相当であり、本件申告書は期限後申告書となるので、本件更正処分は適法である。
なお、請求人は、申告書を3月15日中に郵便ポストに投かんした場合も、時間外収受箱に投かんした場合と同様に、期限内申告書として取り扱うべきである旨主張するが、本件申告書は郵便により提出されたものであるから、原処分庁が、国税通則法第22条の規定に従い、本件申告書を期限後申告書として取り扱ったことは相当であり、この点に関する請求人の主張には理由がない。
本件申告書は期限後申告書であるが、国税通則法第65条第1項に規定する還付請求申告書に該当し、かつ、本件更正処分も還付金の額に相当する税額を減額するものであるので、本件更正処分により賦課すべき加算税は、同項に規定する過少申告加算税ということになる。
ところで、本件更正処分に伴い、国税通則法第66条の規定に基づき賦課した無申告加算税の賦課決定処分については、その適用条文を誤ったものであるが、無申告加算税又は過少申告加算税は共に無申告又は過少申告による申告義務違反の発生を防止する趣旨で課される税であり、本質において変りはないと解される(最高裁昭和40年2月5日第二小法廷判決参照)ことから、無申告加算税の賦課決定処分のうち過少申告加算税相当額を超える部分を取り消すのが相当である。
平成12年10月10日裁決
- 国税不服審判所:公表裁決事例集:公表裁決事例要旨
- 期限後に提出された申告書は還付請求申告書に該当するので、更正処分により賦課すべき加算税は過少申告加算税になるとして無申告加算税の賦課決定処分の一部を取り消した事例
関連するカテゴリ
関連する裁決事例(租税特別措置法>登録免許税法の特例)
- 民事再生中の請求人に対して行われた差押処分が職権濫用による違法・不当な処分に当たらないとした事例
- 中小企業を倒産させないことが国の方針であるとしても、租税の徴収手続において、中小企業の倒産を防止するためにその手続を制限する法令上の定めがない以上、これを裁量判断の基礎とすることができないとした事例
- 原処分庁が法定申告期限内に地価税の申告書が提出されていないことを内部資料によって確認した上、請求人の関与税理士事務所員に対し電話で問い合わせた直後に地価税申告書が提出された場合は、国税通則法第66条第3項にいう「調査があったことにより決定があるべきことを予知してされたものではないとき」に該当せず、同条第1項に規定する「納付すべき税額」とは法定申告期限後に提出された申告書に記載された納付すべき税額を指し、税の納付とは直接関係がなく、無申告加算税の基礎となる税額の計算において法定申告期限内に納付された税額を控除すべきではないとした事例
- 裁決により第二次納税義務の限度額の一部が取り消されることによって超過差押えになるとしても、審判所は差押処分を取り消すことはできないとした事例
- 申告行為の無効は国税通則法第23条及び相続税法第32条の更正の請求の事由とすることはできないとした事例
- 代理人である税理士の行った不正な申告行為の効果が請求人に及ぶとして重加算税等を賦課したことが適法と判断した事例
- 差押不動産の売買契約における買主は滞納者であり、その購入資金である住宅ローンの返済は滞納者が行い、差押え前に請求人が差押不動産の共有持分を取得した事実は認められないことからすれば、差押不動産の取得に滞納者の妻であった請求人の協力、寄与が認められたとしても、差押不動産は夫婦共有財産ではなく、その所有権を有しているのは滞納者であるとした事例
- 相続により取得した財産に係る相続開始前における所有権の取得時効の完成、所有権の取得という事実が判決により後発的に確定した場合、当該判決は、国税通則法第23条第2項第1号にいう判決に当たり、当該事情を財産の価額に与える影響要因として考慮した場合には、その財産の価額は零円とみるのが相当とした事例
- 請求人が経営するパチンコ店のフロアー責任者及び経理責任者として実質的に経営に参画していた従業員が行った売上除外による隠ぺい行為について、それが横領目的であったとしても請求人の行為と同視すべきであるとして、重加算税の賦課決定処分を認容した事例
- 会社法第757条の規定に基づく吸収分割によって滞納法人の事業を承継した請求人は国税徴収法第38条の規定による第二次納税義務を負うとした事例
- 申告後に改正された通達を根拠として法定の期限経過後になされた更正の請求は、不適法であるとした事例
- 居住の用に供していない譲渡物件の所在地に住民登録をしていた者が、納税相談時に担当職員に虚偽の申立てをする等し、申告書を作成させ提出したことは、隠ぺい又は仮装の行為に該当するとした事例
- 滞納者の破産手続開始決定後に行われた滞納者を譲渡担保設定者とする譲渡担保債権についての滞納処分が破産法第43条第1項の規定に反しないとした事例
- 無申告加算税を賦課決定すべきところ誤って過少申告加算税を賦課したため、これを零円とする変更決定処分をした後、改めて無申告加算税の賦課決定処分を行った場合に、変更決定前の過少申告加算税の賦課決定処分について異議申立てがされているときには、無申告加算税の賦課決定処分について異議申立てをせずに審査請求をすることができる「正当な理由」があるとした事例
- ゆうメールによる納税申告書の提出に国税通則法第22条の適用はないとした事例
- 利息制限法所定の制限利息を超える額の利息を支払ったことによる過払金返還請求権は、その利息を支払った時に発生し、既に発生した債権は弁済期が未到来であっても差押えの対象となること及び一身専属権であると認めることはできないとした事例
- 滞納者の預金口座から出金された金銭が請求人の預金口座に入金されたことは、国税徴収法第39条の無償譲渡には該当しないとした事例(第二次納税義務の納付告知処分・全部取消し・平成26年1月7日裁決)
- 「公売中止申立書」は、公売通知の取消しを求める異議申立書として取り扱うことが相当であるとした事例
- 売上金額の一部を除外し、これを簿外の代表者名義の預金口座に預け入れることは偽りその他不正の行為に当たるとした事例
- 破産手続が異時廃止により終了したとしても、それによって破産法人の法人格は消滅せず、清算の目的の範囲内で、その法人格は存続しているとした事例
※最大20件まで表示
税法別に税務訴訟事例を調べる
当コンテンツは著作権法第13条(権利の目的とならない著作物)の規定に基づき、国税不服審判所:公表裁決事例要旨と裁判所:行政事件裁判例のデータを利用して作成されています。