請求人の意思に反して担保提供がされたとは認められないとした事例
裁決事例(国税不服審判所)
2010/12/03 [租税特別措置法][登録免許税法の特例] 請求人は、請求人が所有する本件不動産を請求人の長男であるJの滞納国税の担保とする旨の本件担保提供書等は、請求人の長女であるQが請求人に無断で作成したものであり、本件担保提供書等に添付された印鑑証明書も、Qが請求人に無断で交付を受けたものであるから、本件不動産の担保提供は無効であり、無効な契約に基づく抵当権設定登記を前提とする本件差押処分は違法である旨主張する。
しかしながら、Qは、請求人の自宅の近くに居住し、請求人と親密な親子関係の下にあって、請求人は、請求人がすべき様々な手続についてQに頼り、Qは、請求人の実印を使用する手続を代行することも珍しくなく、いつも請求人の意向に沿った行動をしていたものと推認できること、請求人は、Jに対し、母親としてJを援助することに労を惜しまず、援助を求められればできる限り応じていたと推認でき、そのことをQも知り得たものと推認されること、請求人は、Jが納税のための資金繰りに窮し、請求人の援助だけでは足りず、Q及び請求人の自宅の近隣に居住していた請求人の弟Sからも資金援助を受けたことを知っており、頻繁な往来のある親族の間で、滞納国税の処理の対応を検討していたことは、Q及び請求人と同一市内に居住していた請求人の次女Rはもとより、S夫婦まで知っていたにもかかわらず、請求人にそのことが全く伝わらなかったと断定できる状況にあったとはいえないこと、Jの関与税理士は、Q及びRに、担保提供物件の選択について請求人に相談するよう指示したところ、Qから請求人が自宅がなくなると困ると言うので本件不動産にした旨確認したこと、請求人は、本件不動産が処分されるおそれのあることを知ってから5か月も経過した後に、初めて原処分庁に対して本件担保提供書等の作成及び提出が請求人に無断で行われた旨申し出ており、これら一連の請求人の対応は、その意に反して自己の不動産を担保として提供されたことを知った者の行動としては不自然といわざるを得ないことなどからすれば、請求人は、Qを中心とした親族を通じてJのために担保提供が必要なことを知った上で本件不動産の担保提供に同意し、Qが本件担保提供書等の署名押印及びその提出を請求人に代わって行っていたものとみるのが相当である。
したがって、本件不動産が、請求人の意思に反し担保として提供されたとは認められず、本件抵当権設定契約は有効であるから、請求人の主張には理由がない。
《参照条文等》 国税徴収法第152条 国税通則法第46条第5項、第52条第1項 国税通則法施行令第16条第3項
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