原処分は適法な調査手続に基づいて行われたものであり、違法は認められないとした事例
裁決事例(国税不服審判所)
2011/02/14 [租税特別措置法][登録免許税法の特例]《ポイント》 この事例は、法人税の更正処分及び源泉所得税の納税告知処分が調査手続を欠く違法なものか否かが争われたところ、適法な調査手続に基づいて行われた処分であり違法はないと判断したものである。
なお、本件処分にはホステス報酬に係る納税告知処分が含まれており、ホステス報酬に係る源泉所得税額の計算については、最高裁平成22年3月2日第三小法廷判決が、所得税法施行令第322条《支払金額から控除する金額》にいう「当該支払金額の計算期間の日数」は当該期間に含まれるすべての日数を指すものと判断し、ホステスの実際の稼働日数を指すという課税庁の主張を退けたことから、この事例でも、これに従ってホステス報酬に係る源泉徴収税額を再計算し、納税告知処分の一部を取り消している。
《要旨》 請求人は、原処分庁が本件査察調査をもって請求人に対し調査をしたとし、改めて調査を行わなかったのであるから、調査をすることなく行った本件各告知処分等及び本件各再更正処分は、適正な手続を欠く違法なものである旨、また、一度減額したものをいかなる理由があろうとも再度増額の処分をすることは権利の濫用である旨主張する。
しかしながら、課税庁が内部において既に収集した資料を基礎として正当な課税標準を求めることも「調査」の範囲に含まれるものと解されるところ、本件各告知処分等及び本件各更正処分は、請求人の源泉所得税について、当初告知処分に係る請求人の源泉徴収簿等の関係資料及び源泉所得税の納付事績等の既に収集した資料等を改めて照合及び検討した上で、また、請求人の法人税について、当初減額更正処分の関係資料、法人税の確定申告書及び同付属書類等の既に収集した資料等を改めて照合及び検討した上で行われたものであるから調査手続を欠く違法な処分とは認められない。また、課税庁は、自ら行った処分に瑕疵を発見したときは、その瑕疵が実体的なものであれ、手続的なものであれ、適正な課税の確保実現を図るため、これを取り消して新たな処分をなし得るとものと解すべきであるから、原処分庁が国税通則法第36条《納税の告知》第1項第2号の規定に基づき請求人に対して本件各告知処分等を行ったことに違法は認められない。
《参照条文等》 国税通則法第24条、第26条、第36条
《参考判決・裁決》 新潟地裁平成11年7月15日判決(税資256号12頁) 最高裁平成22年3月2日第三小法廷判決(民集64巻2号420頁)
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