所得税の納税地とは、生活の本拠をいうと解されるところ、各地に住居を有していると認められる納税義務者の生活の本拠は、単に住民登録が異動していることやそこに住居があるといったことのみによることなく、納税義務者の資産の所有状況及びその所在、家族の居住状況、夫婦の同居の推認及び職業等の客観的な事実を総合して判定するのが相当であり、また、国税に関する税務署長の発する書類の送達の効力は、その書類が社会通念上送達を受けるべき者の支配下に入ったと認められる時、すなわち、書類の名あて人がその書類を了知し得る状態になった時にその効力が生ずるとした事例
裁決事例(国税不服審判所)
1997/03/31 [租税特別措置法][登録免許税法の特例] 所得税の納税地とは、所得税法第15条(納税地)第1項により、国内に住所を有する納税者にあってはその者の住所地とされており、さらに、その住所とは民法第21条に規定する住所の意義である生活の本拠をいうと解されるところ、所得税法の解釈上、各地に住居を有していると認められる納税義務者の生活の本拠がいずれの土地にあると認めるべきかは、単に住民登録が異動していることやそこに住居があるといったことのみによることなく、納税義務者の資産の所有状況及びその所在、家族の居住状況、夫婦の同居の推認並びに職業等の客観的な事実を総合して判定するのが相当であって、これらの事情を総合判断すれば、請求人が住民登録を異動したことは認められるが、納税地が異動したとはいえない。
国税通則法第12条(書類の送達)第1項により、書類を交付送達すべき場所はその送達を受けるべき者の住所又は居所(事務所及び事業所を含む)とされ、原処分に係る通知書(本件通知書)の送達場所が請求人の妻の事業所であることが認められるから、本件通知書の交付送達は当該規定に抵触する意味で違法である。しかし、国税通則法において送達に関する規定を設けた趣旨は、国税に関する税務署長の発する書類が、名あて人のもとに確実に、かつ速やかに送達され、その送達によりじ後の手続が適正に進行することを確保することにあるものであって、その書類が社会通念上送達を受けるべき者の支配下に入ったと認められる時、すなわち、書類の名あて人がその書類を了知し得る状態になった時に、書類送達の効力が生ずるものと解されるところ、調査担当職員が請求人の次男に交付した本件通知書は請求人のもとに確実に、かつ速やかに送達されたこと、本件店舗は請求人の妻が請求人と同居している住所地と同じ町内のすぐ近くに所在し、その敷地は請求人の所有名義の土地であることが認められるから、送達に関する瑕疵は極めて軽微なものにとどまり、本件通知書の送達の効力に影響を及ぼすものではなく、原処分の取消事由にはならない。
平成9年3月31日裁決
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