物上保証人である請求人が担保提供に承諾したことにつき、動機の錯誤により無効である旨の主張を排斥した事例
[国税通則法][納税の猶予と担保]に関する裁決事例(国税不服審判所)。
裁決事例(国税不服審判所)
2007/03/01 [国税通則法][納税の猶予と担保] 請求人は、請求人自身も共同相続人の一人であると信じたことにより他の相続人である滞納者の相続税の延納につき請求人所有不動産を担保提供することに承諾する意思表示をしたこと、しかしながら、被相続人と請求人との養子縁組が訴訟により無効とされ遡及的に相続人ではなかったことになったこと、したがって、その担保提供を承諾する意思表示は動機の錯誤により無効であることを主張して、原処分庁がした請求人所有不動産に対する担保物処分のための差押えの取消しを求めている。
しかしながら、請求人の養子縁組の効力については請求人が担保提供に同意する以前から争いがあったことなどの事実の下においては、請求人は、少なくとも、担保提供の承諾の時において自己の相続人としての地位がその争いの帰趨によっては失われる可能性があることを認識していたものと推認するのが合理的である。また、請求人と被相続人との関係が、実体上、養親子関係にないことは、そもそも請求人自身において当然に熟知していたものというべきである。
そうすると、請求人は、本来は相続人でないところ、担保提供の承諾をした当時、相続人でないことの可能性は十分に認識していたというべきであるから、相続人でないのに相続人であると認識していたというような動機の錯誤があったとまでは認めることができないというべきである。したがって、請求人の主張には理由がない。
平成19年3月1日裁決
- 国税不服審判所:公表裁決事例集:公表裁決事例要旨
- 物上保証人である請求人が担保提供に承諾したことにつき、動機の錯誤により無効である旨の主張を排斥した事例
関連するカテゴリ
関連する裁決事例(国税通則法>納税の猶予と担保)
- 物上保証人である請求人が担保提供に承諾したことにつき、動機の錯誤により無効である旨の主張を排斥した事例
- 融通手形の受取人の倒産による手形債務の負担が、請求人に帰責性があるということはできず、不測の事態によって資金繰りが困難になったという点で、売掛金等の回収が不能になった場合と同視できることから、国税通則法第46条第2項第1号に掲げる事実に類する事実に当たるとした事例
- 請求人について、「著しい損失」は認められないものの、売上金額は著しく減少し、赤字の状態に陥っているから、国税通則法第46条第2項第4号に掲げる事実に類する事実があるとした事例
- 納税の猶予不許可処分の取消しを求める利益がないとした事例
- 破産法人がその取締役の滞納国税のために破産宣告前にした納税保証は、適法有効な担保提供手続(保証契約)によるものであり、破産手続の開始によって何らの影響も受けないとした事例
- 請求人の意思に反して担保提供がされたとは認められないとした事例
- 原処分時において資料の提出がないため納付困難であるか否かの判断ができなかったとしても、審判所の調査によって納付困難な税額が算定され、国税通則法施行令第15条第2項第3号に規定する場合でないことは明らかであるから、納税の猶予申請書の納付計画欄の記載は納税の猶予申請手続の必須条件とはいえないとした事例
- 増担保の要求処分の是非について、保証人の資力が著しく減少したため、請求人の国税の納付を担保することができないものと認定した事例
- 法人成りにより役員報酬を得ることとなった請求人には、国税通則法第46条第2項第4号に規定する事実に類する事実があるとはいえないとした事例
- 国税通則法第38条第1項各号に掲げる繰上請求事由があるときは、納税の猶予申請に係る国税がその猶予期間内に完納されることが確実であるとか、当該国税の徴収確保の上で全く支障がないなどの特段の事情がない限り、納税の猶予は認められないとした事例
- 延納条件が有利に変更された場合は、変更前になされた保証債務も、主債務と同様の内容をもって存続しているとした事例
- 原処分庁が納税の猶予の適否の判断に必要な事実確認等を行おうと努めたにもかかわらず、請求人自らが要件が充足されていることを明らかにしていく姿勢がうかがわれなかったのであるから、納税の猶予を受ける権利を侵害した事実はないとした事例
- 滞納後に発生した猶予該当事実を、納税の猶予の猶予該当事実に当たるとした事例
- 請求人について、売上げの減少や経費の増加の程度が著しいとは言い難く、利益については赤字の状態に陥ったとは認められないから、国税通則法第46条第2項第5号に規定する同項第4号に類する事実(事業についての著しい損失に類する事実)があったとは認められないとした事例
- 担保物処分(国税を担保する抵当権の実行)のための差押処分につき抵当不動産の第三取得者に対して民法第378条[滌除の意義]以下に定める抵当権の実行通知をはじめとする諸手続をとらないことに違法はないとした事例
- 国税通則法第46条第2項第4号の「その事業につき著しい損失を受けたこと」に類する事実が認められないとした事例
- 国税通則法第46条第2項第4号の「事業につき著しい損失を受けたこと」に該当する事実の有無は、一定期間における損益計算を行うことにより判定することが相当であり、生活費等を控除して利益金額を算定すべきとする請求人の主張は採用できないとした事例
税法別に税務訴訟事例を調べる
当コンテンツは著作権法第13条(権利の目的とならない著作物)の規定に基づき、国税不服審判所:公表裁決事例要旨と裁判所:行政事件裁判例のデータを利用して作成されています。