請求人は事業として山林業を営んでいたとは認められないことから、譲渡した山林素地は事業用資産とはいえず、特定の事業用資産の買換えの場合の譲渡所得の課税の特例は適用できないとした事例
裁決事例(国税不服審判所)
2008/10/27 [租税特別措置法][所得税法の特例][譲渡所得の特例][特定の事業用資産の買換えの場合等の課税の特例] 請求人は約○○ヘクタールの山林素地を所有していたが、過去7年間において、請求人に山林の伐採又は譲渡による所得があったのは、平成15年分、平成17年分及び平成18年分の3年分であり、いずれも森林組合又は下草刈りを行う業者からの依頼に応じて山林を伐採したことによる所得である。そして、山林所得がある各年分でいずれも山林所得の金額の計算上損失が生じており、収入金額を見ても、平成15年分は約○○○○円あるものの、平成17年分は約○○○○円、平成18年分は○○○○円と僅少であるから、請求人が、営利を目的として反復継続して、山林の伐採又は譲渡を行っていたとはいえない。
さらに、請求人は、山林素地を遅くとも平成3年1月までには取得しており、その所有期間は長期間に及んでいたにもかかわらず、その間、新たな植林をしていないと認められる。したがって、請求人が植林を計画的に企画遂行していたともいえない。
以上のとおり、請求人は、営利を目的とした山林の伐採又は譲渡を反復継続して行っておらず、長期間にわたって植林をしていないから、請求人が下草刈りなどの山林の管理を行っていたとしても、これに費やす労務もまた僅少であったと認められる。加えて、請求人には、平成18年分の所得税の確定申告において、事業所得(農業)、不動産賃貸による不動産所得、給与所得を申告したことに照らすと、山林所得の基因となる業務は従たる経済活動であったとみるべきである。
そうすると、山林の伐採又は譲渡の反復継続性及びその金額、植林の計画的な企画遂行、さらに、これらに費やす労務の程度、社会的地位などのいずれの観点から見ても、請求人が、本件譲渡の当時において、自己の計算と危険において独立して、営利性、有償性を有し、かつ、反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる山林業を営んでいたとはいえない。
したがって、請求人が事業として山林業を営んでいたとは認められないから、本件山林素地は、事業の用に供する資産とはいえず、本件譲渡に係る譲渡所得の金額の計算上、特定事業用資産の買換えの特例を適用することはできない。
平成20年10月27日裁決
- 国税不服審判所:公表裁決事例集:公表裁決事例要旨
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