出資持分の定めのない医療法人への組織変更の準備中に相続が開始した場合の医療法人の出資について、財産評価基本通達の定めにより評価することが相当であるとした事例
裁決事例(国税不服審判所)
2009/01/09 [消費税法][申告、更正の請求の特例] 医療法人X会がP県知事に対して定款変更に係る認可申請をしたのは、本件相続開始日より後の平成○年○月○日であり、同知事の定款変更に係る認可の通知は同月○日付で行われており、X会は、本件相続開始日においては、同知事による本件定款変更の認可は受けていないことから、X会は出資持分の定めのある社団医療法人であり、X会の出資者は、X会の財産的価値をその持分に応じて有していたこと、さらに、本件相続の開始日前におけるX会の出資者は、被相続人、N及びVの3名であり、被相続人が有していた出資持分(以下「本件出資持分」という。)のすべてをNが遺贈により取得したこと、並びに本件相続の開始直前及び開始直後におけるX会の社員全員が被相続人、N(被相続人の配偶者)、V(被相続人の次男)及びその親族であったことに照らせば、本件相続の開始した時において、社員総会において本件定款変更を行わない旨の決議をし、これまでどおり出資持分の定めのある医療法人として存在し続けること、また、N、U(被相続人の長男)、V及びY(被相続人の弟、X会理事長)は、X会の財産的価値を把握していたことからすると、出資者が社員総会の承認を受けてX会の出資持分を当該算出した額を基準として第三者に譲渡することも可能であったと考えられるし、X会を解散して、残余財産の分配を受けることも可能であったことなどからすれば、本件出資持分は、特別の放棄の意思決定及び特別の法定手続の拘束下にあるなどと請求人が主張する事情は、X会、Y、被相続人、N及びVが、将来にわたって存続し得るよう妥協を図ることを目的として、実質的にX会の分割を図りたいとのNその他関係者の主観的事情であって、客観的交換価値である相続税法第22条に規定する時価を算定する場合に、このような主観的事情を考慮することは相当ではない。
したがって、請求人の主張する事情は、本件出資持分の評価に当たり、財産評価基本通達194−2の定めによらないことが正当と認められるような特別な事情には該当しない。
本件においては、平成○年○月○日に開催されたX会の臨時社員総会において本件定款変更が決議され、その際に、出資者の一人であった被相続人も社員として本件定款変更の決議に加わり、被相続人は、本件定款変更によって自己の出資持分が消滅することを認識した上で当該決議に賛成したと認められるが、この意思表示により、被相続人に出資持分放棄の義務が生じたということはできず、その後、平成○年○月○日のP県知事に対する本件定款変更に係る認可申請書の提出を経て、同月○日付のP県知事の本件定款変更の認可があったことにより、Nが遺贈により取得した被相続人のX会に対する出資持分が消滅したのである。したがって、本件相続開始日において、「出資持分の放棄義務」という被相続人の債務は存在しないから、Nの相続税の課税価格の計算上、本件出資持分の価額と同額である○○○○円を本件出資持分の放棄義務として債務控除額に計上して控除することはできない。
平成21年1月9日裁決
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