貸付金債権に係る債務者に返済能力等が認められないから、その貸付金債権の評価額は零円であるとした事例
[相続税法][財産の評価][土地及び土地の上に存する権利]に関する裁決事例(国税不服審判所)。
裁決事例(国税不服審判所)
2012/09/13 [相続税法][財産の評価][土地及び土地の上に存する権利]《要旨》 原処分庁は、被相続人が有していたH(個人)に対する貸付金債権は相続開始日現在において存在しており、その評価額は貸付金元本とその遅延損害金の合計額となる旨主張する。
しかしながら、財産評価基本通達205《貸付金債権等の元本価額の範囲》は、貸付金債権等の評価を行う場合において、その債権金額の全部又は一部が「回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるとき」には、それらの金額は元本の価額に算入しない旨定めており、債務者が個人である場合には、債務超過の状況が著しく、その者の信用、才能等を活用しても、現にその債務を弁済するための資金を調達することができないだけでなく、近い将来においても調達することができる見込みがない場合がこれに該当すると解されるところ、本件においては、確かに、被相続人はHに対する貸付債権を有していた、つまり、Hは当該貸付金債権に対応する借入金を負っていたと認められるものの、Hの課税実績、不動産や預金の保有状況からすると、Hは著しい債務超過の状態にあり、当該借入金を返済するための資金を調達することは極めて困難であったと認められることなどに加え、当審判所における調査によっても、Hの具体的資力、返済能力を認めるに足りる証拠は見出せない。これらのことによれば、被相続人のHに対する貸付金債権は、「回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるとき」に該当するというべきであり、その評価額は零円となる。
《参考条文》 相続税法第22条 財産評価基本通達204、205
- 国税不服審判所:公表裁決事例集:公表裁決事例要旨
- 貸付金債権に係る債務者に返済能力等が認められないから、その貸付金債権の評価額は零円であるとした事例
関連するカテゴリ
関連する裁決事例(相続税法>財産の評価>土地及び土地の上に存する権利)
- 借地権の設定されている土地の評価に当たり、自用地としての価額から控除すべき借地権の価額はないとした事例
- 評価対象地は、道路を開設するなどした開発を行うことが最も合理的であり、「広大地」として評価するのが相当であるとした事例
- 相続により取得した建物の周囲にある緑化設備は、共同住宅の敷地内に設けられた構築物であるから、財産評価基本通達97の定めにより評価すべきであるとした事例
- 農業の主たる従事者の死亡により、市町村長に買取りの申出ができる生産緑地の価額は、生産緑地でないものとして評価した価額から、その価額に100分の5の割合を乗じて計算した金額を控除した価額で評価するのが相当であるとした事例
- 合併の際、被合併法人から上場株式を著しく低い価額で受入れ、作為的に評価差額を創り出した場合には、純資産価額方式による取引相場のない株式の評価上、その創り出された評価差額に対する法人税等相当額を控除することはできないとした事例
- A土地及びB土地の評価については、取引事例及び公示価格を基に土地価格比準表の地域格差及び個別格差の補正率を適用して算定し、また、X社の出資の評価については、評価差額に対する51パーセントの法人税等相当額が控除できないとした事例
- 青空駐車場として貸し付けられている雑種地の価額の評価上控除すべき賃借権の価額について、その賃借権が登記されたものではなく、その設定の対価として権利金の授受もないことから、その自用地価額に、残存期間に応ずる相続税法第23条に規定する地上権割合の2分の1に相当する割合を適用して評価した事例
- 相当の地代を支払って賃借していた土地に係る借地権につき相続税の課税価格に算入される価額はないとした事例
- 貸宅地の評価においては、一般に借地権価額控除方式には合理性があり、また、請求人らが採用した収益還元方式の「純収益」や「還元率」は標準化されたものとは認められないとして、請求人らの主張する評価方式を排斥した事例
- 純資産価額の計算上、法人税額等相当額を控除しないとしても違法ではないとした事例
- 代償債権の評価に当たり、その一部は、回収が著しく困難であると認定した事例
- 相続税の申告期限前に同族法人に対する貸付金の一部が受贈益として確定しているからその部分について回収不能であるとする請求人の主張を排斥した事例
- 貸し付けている墓地用地の相続税評価額について、残存期間が50年を超える地上権が設定されている土地の評価に準じて評価した事例
- 特定路線価の評定方法に不合理と認められる特段の事情がない限り特定路線価を正面路線価として評価するのが相当とした事例
- 親族の居住用家屋の敷地の用に供されていた宅地は使用借権の付着した宅地として、樹苗地として低い賃料で法人に賃貸されていた畑地は、賃借権の付着した雑種地として評価するのが相当とした事例
- 被相続人は賃借していた土地の所有者に対して別途建物を賃貸しており、その建物の賃貸料が相場より低いのは、その低い分だけ土地の賃借料と相殺されているのであるから、この相殺部分の金額を土地の賃借料に加算すると土地の賃借料は相当地代に当たるので、被相続人の有する借地権の評価額は零であるとの請求人の主張が排斥された事例
- 評価対象地は、標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大とは認められないから広大地に該当しないとした事例
- 関連会社の地上権の設定の有無について、本件は、当事者間の特殊な信頼関係に基づく土地の使用関係であって、地上権の設定の事実は認められないとした事例
- 財産評価基本通達188の規定に基づき株主区分の判定を行うに当たり、発行済株式数から控除する株式は、同188−3及び同188−4に定める株式に限られず、むしろ同188の定めにおける発行済株式数に、議決権を有しないこととされる株式及び議決権のない株式は、当然に含まれないとした事例
- 相続により取得した預託金制のゴルフ会員権の価額は、通常の取引価格の70パーセントに相当する金額によって評価するのが相当であるとした事例
※最大20件まで表示
税法別に税務訴訟事例を調べる
当コンテンツは著作権法第13条(権利の目的とならない著作物)の規定に基づき、国税不服審判所:公表裁決事例要旨と裁判所:行政事件裁判例のデータを利用して作成されています。