被相続人は相続開始の8年前に本件土地についてその同族会社を借地人とする建物保有目的の借地権を設定したが、相続開始時には当該会社の建物はなく、当該会社の代表者である請求人の建物が存していたなどの事情に照らし、当該借地権は相続財産評価において借地権と評価する実質を欠いているとして、本件土地は自用地として評価すべきであるとした事例
裁決事例(国税不服審判所)
2008/06/27 [相続税法][財産の評価][土地及び土地の上に存する権利] 本件土地の上には(請求人所有の)本件建物が存するものの、本件法人自身は、本件土地の上に建物を所有していないことから、本件土地賃貸借契約により設定された借地権についてはいまだ対抗力を有していないのであり、仮に、底地である本件土地の所有権が第三者に譲渡された場合には、当該第三者に借地権を対抗できない関係にあり、このことは請求人に対する関係でも同様であり、本件土地の利用権について、本件法人は、建物を所有する請求人には自らの借地権を主張できない関係にたつものということができる。
加えて、財産評価基準書における借地権割合は、借地権の設定に当たり、一時金の支払慣行がある、あるいは、一時金の支払慣行がない場合であっても、借地権の売買が行われたり、また、土地の売買が借地権価額に相当する価額を控除したいわゆる底地価額によって行われたり、借地権の返還を受ける際にいわゆる立退料が支払われる慣行があると認められることに基づき定められているものであるが、本件の場合は、底地である本件土地が第三者に譲渡されれば、当該第三者に借地権を対抗することはできず、したがって、本件法人は対抗力を有しないために借地権が単独で売買される、又は土地の売買が借地権価額を控除した価額によって行われるとは認められず、また、本件土地の上には本件建物が存在しており、それを取得又は除去しない限り、本件法人による本件土地賃貸借契約に基づく建物所有目的は果たし得ない状況にあると認められ、本件土地賃貸借契約を継続する実益がないことから、借地権の返還に当たり立退料の支払を要しないと認められる。
そうすると、本件土地賃貸借契約によって設定された借地権は、本件土地の上に本件建物が存する状況の下においては、本件法人は建物所有目的で本件土地を利用できないほか、本件土地の利用権を実質的に支配しているということもできないし、借地権として評価すべきほどの資本投下もなされていないというべきであり、さらに、市場における流通も想定できないと認められることからすれば、かかる借地権を相続財産評価において借地権と評価するには、その実質を欠くものというべきである。
平成20年6月27日裁決
- 国税不服審判所:公表裁決事例集:公表裁決事例要旨
- 被相続人は相続開始の8年前に本件土地についてその同族会社を借地人とする建物保有目的の借地権を設定したが、相続開始時には当該会社の建物はなく、当該会社の代表者である請求人の建物が存していたなどの事情に照らし、当該借地権は相続財産評価において借地権と評価する実質を欠いているとして、本件土地は自用地として評価すべきであるとした事例
関連するカテゴリ
関連する裁決事例(相続税法>財産の評価>土地及び土地の上に存する権利)
- 1. 本件贈与土地を評価するに当たり、過去3年分の路線価の平均額に基づいて算定することは相当ではないとした事例2. 本件土地の使用関係は、使用貸借であると認められるから、更地と同様に評価すべきであるとした事例
- 贈与によって取得した土地には借地権は存在せず、建物所有を目的とする賃借権以外の賃借権の目的となっている土地として評価すべきであるとした事例
- 特定路線価の評定方法に不合理と認められる特段の事情がない限り特定路線価を正面路線価として評価するのが相当とした事例
- 純資産価額の計算上、法人税額等相当額を控除しないとしても違法ではないとした事例
- 親族の居住用家屋の敷地の用に供されていた宅地は使用借権の付着した宅地として、樹苗地として低い賃料で法人に賃貸されていた畑地は、賃借権の付着した雑種地として評価するのが相当とした事例
- 取引相場のない株式の相続税の評価額について、特定の上場会社を比準会社として計算した評価額は採用できないとした事例
- 取引相場のない株式の評価を純資産価額方式で行うに当たって、評価会社が土地収用に伴い取得した代替資産の価額は、圧縮記帳後の価額ではなく財産評価基本通達の定めにより評価した価額によるのが、また、評価会社が保有する上場会社が発行した非上場の優先株式の価額は、その上場会社の株式の価額ではなく払込価額により評価した価額によるのが相当であるとして、請求人の主張を排斥した事例
- 取引相場のない株式を純資産価額によって評価する場合に、租税負担の公平の観点から特別な理由があると認められるときは、法人税額等相当額を控除せずに評価することが妥当であるとした事例
- 親子間で使用貸借した土地の相続税評価額は自用地としての価額によるべきであるとした事例
- 被相続人の所有に係る相続人の居住用家屋の敷地は、借地権の目的となっている土地ではなく自用地であるとした事例
- 協業組合の出資の評価については、評価基本通達179を適用して評価することが相当とした事例
- 船舶の価額は、売買実例価額が明らかでないとしても、精通者意見価格が明らかな場合は、精通者意見価格によって評価すべきであるとした事例
- 医療法人の定款を変更し、退社時の出資の払戻額及び解散時の出資の払戻額を払込出資額に限る旨定めたとしても、出資持分の価額は、払込出資額により評価するのではなく、財産評価基本通達194−2の定めに基づき評価するのが相当であるとした事例
- 貸付金債権の評価につき、その会社の資産状況及び営業状況等が破たんしていることが明白かつ債権の回収の見込みのないことが客観的に確実であるといい得る状況にあったとは認められないから、その一部を回収不能として減額することは認められないとした事例
- 鉄道用地下トンネルを埋設するための区分地上権は相続税法第23条に規定する地上権には含まれないとした事例
- 中古車展示場用地としての本件土地の賃貸借契約は、その土地使用の主たる目的がその地上に建物を建造し、所有することには当たらないとして、本件土地は、貸宅地として借地権を控除して評価することはできないとした事例
- 相続土地に係る賃借関係の実態は使用貸借と解するのが相当であると認定し、また、相続財産を売却して弁済に充てることを予定している被相続人の保証債務は相続税の債務控除の対象にならないとした事例
- 農地法施行前に設定されていた農地の賃借権について、賃貸借の効力が生じており、農地法第20条《農地又は採草牧草地の賃借権の解約等の制限》第1項の規定の適用があるから、財産評価基本通達9の(7)の耕作権に該当するとした事例
- 相続により取得した建物の周囲にある緑化設備は、共同住宅の敷地内に設けられた構築物であるから、財産評価基本通達97の定めにより評価すべきであるとした事例
- 財産評価基本通達24−4《広大地の評価》に定める「その地域における標準的な宅地の地積」については、河川や山などの自然的状況、行政区域、都市計画法による土地利用の規制など公法上の規制等、道路、鉄道及び公園など、土地の使用状況の連続性及び地域の一体性を分断する場合がある客観的な状況を総合勘案し、利用状況、環境等が概ね同一と認められる、ある特定の用途に供されることを中心としたひとまとまりの地域における標準的な宅地の地積に基づいて判断するのが相当であるとした事例
※最大20件まで表示
税法別に税務訴訟事例を調べる
当コンテンツは著作権法第13条(権利の目的とならない著作物)の規定に基づき、国税不服審判所:公表裁決事例要旨と裁判所:行政事件裁判例のデータを利用して作成されています。