被相続人と請求人との間の土地の使用貸借契約は、宅地転用される前に解除されており、その後の土地の賃貸借契約における賃貸人は被相続人であるから、相続開始時には建物の所有を目的とする賃借権が存するものと認められるとして、借地権相当額を控除して評価するのが相当とした事例
裁決事例(国税不服審判所)
2003/05/19 [相続税法][財産の評価][土地及び土地の上に存する権利] 原処分庁は、P町宅地について、賃貸借契約に請求人が使用借権を有する立場で参加していること及び賃料を請求人が収受している実態があることをもって、利用関係は、請求人が被相続人から使用貸借により借地したものを他の者に転貸したものである旨、またK社使用宅地については被相続人が農業者年金を受給するため被相続人と請求人との間で使用貸借契約を締結していたことを主たる理由として、請求人が被相続人から使用貸借により借地し、それを賃借人に転貸していたものと主張する。
しかしながら、P町宅地の利用関係は、昭和56年2月20日に「農地法第3条による使用貸借解約による通知書」を提出した日までの間は、請求人を相手方として使用借権が設定されていたものと推認されるが、同日以後は、被相続人が農地法の手続を経た上で、これらの土地を宅地に転用し、被相続人が賃貸人となって、順次、賃借人に対して賃貸し、賃借人が建物を建築して利用していることが認められる。そして、P町宅地に係る本件土地賃貸借契約書には、賃貸人の承継人として請求人名が記載されているだけで、どのような権限を有することになるのかは明らかではないが、[1]賃貸人は被相続人と明記されていること及び[2]農地に関しての被相続人と請求人との間の使用貸借は宅地転用される前にすでに解除されていることから、当該記載をもって、原処分庁主張のとおりに解することはできないし、また、賃料を現実に享受している者が誰であるかのみによって同宅地の利用関係が決せられることにもならないので、原処分庁の主張には理由がない。
K社使用宅地については、請求人と被相続人との間の使用貸借契約が解除された経緯は、P町宅地と同様であると認められ、また、借地人である同族会社から無償返還届出書は提出されておらず、また、過去に借地権の認定課税が行われていないとしても、そのことが利用関係に影響して借地権の目的となっているか否かを左右するものでないことは明らかであるから、本件相続開始時において、同宅地は借地権設定の目的となっている宅地と認めるのが相当である。
以上から、いずれの宅地についても相続開始時において建物の所有を目的とする賃借権が存するものと認めるのが相当であり、自用地としての価額から借地権の価額を控除した金額によって評価するのが相当であるので、原処分庁の主張は採用できない。
平成15年5月19日裁決
- 国税不服審判所:公表裁決事例集:公表裁決事例要旨
- 被相続人と請求人との間の土地の使用貸借契約は、宅地転用される前に解除されており、その後の土地の賃貸借契約における賃貸人は被相続人であるから、相続開始時には建物の所有を目的とする賃借権が存するものと認められるとして、借地権相当額を控除して評価するのが相当とした事例
関連するカテゴリ
関連する裁決事例(相続税法>財産の評価>土地及び土地の上に存する権利)
- 土地(私道)が不特定多数の者の通行の用に供されていたとは認められないからその土地の価額は自用宅地の価額の60パーセントに相当する金額により評価することが相当であるとした事例
- 鉄道用地下トンネルを埋設するための区分地上権は相続税法第23条に規定する地上権には含まれないとした事例
- 存続期間が100年を超える地上権の設定であっても、建物の所有を目的とする場合には借地法の法的保護の下にあるから、相続税法第23条“地上権及び永小作権の評価”の適用はないとした事例
- 被相続人と請求人との間の土地の使用貸借契約は、宅地転用される前に解除されており、その後の土地の賃貸借契約における賃貸人は被相続人であるから、相続開始時には建物の所有を目的とする賃借権が存するものと認められるとして、借地権相当額を控除して評価するのが相当とした事例
- 評価対象地は、道路を開設するなどした開発を行うことが最も合理的であり、「広大地」として評価するのが相当であるとした事例
- 第三者に貸し付けられている被相続人と他の共同相続人との共有建物の敷地の評価に当たり、当該敷地には当該他の共同相続人の当該建物に係る地上権は存在しないとした事例
- 取引相場のない株式を純資産価額方式により評価する場合において、評価会社が負担した弔慰金については、相続財産とみなされず、実質上の二重課税とはならないので、負債に計上する必要はないとした事例
- 不整形地の評価をするに当たって原処分庁が採用した想定方法による整形地は財産評価基本通達20に定める想定整形地に当たらないとした事例
- 出資持分の定めのない医療法人への組織変更の準備中に相続が開始した場合の医療法人の出資について、財産評価基本通達の定めにより評価することが相当であるとした事例
- 類似業種比準方式における1株当たりの利益金額の計算上、匿名組合契約に係る分配金は非経常的な利益ではないから法人税の課税所得金額から控除すべきではないとした事例
- 農地法施行前に設定されていた農地の賃借権について、賃貸借の効力が生じており、農地法第20条《農地又は採草牧草地の賃借権の解約等の制限》第1項の規定の適用があるから、財産評価基本通達9の(7)の耕作権に該当するとした事例
- 取引相場のない出資を純資産価額方式により評価するに当たり、割賦販売に係る未実現利益の金額は控除できないとした事例
- 評価対象地が存する「その地域」の周辺地域の開発状況に照らし、同土地につき開発を行うとした場合は公共公益的施設用地の負担が必要となるから、広大地に該当するとした事例
- 相当の地代を支払っている場合の借地権は、贈与財産である株式の純資産価額の計算上、株式の発行会社の資産の部に算入するとした事例(平成24年分贈与税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分・一部取消し・平成27年3月25日裁決)
- 戸建住宅の敷地として分譲開発した場合に公共公益的施設用地の負担は必要ないことから広大地には該当しないとした事例
- 倍率方式で評価する地域内に所在する市街地農地を評価するに当たり、当該農地が宅地であるものとした場合における固定資産税評価額が明らかな場合には、当該固定資産税評価額を基として当該農地が宅地であるものとした場合の価額を算定すべきであり、また、控除すべき造成費に給水管等敷設費は含まれないとした事例
- 相当の地代を支払って賃借していた土地に係る借地権につき相続税の課税価格に算入される価額はないとした事例
- 純資産価額の計算上、法人税額等相当額を控除しないとしても違法ではないとした事例
- 医療法人の出資持分の評価に際し、相続開始時点において既に退社した社員が出資金払戻請求権を行使していない場合であっても、当該出資持分については、当該退社社員が退社する直前の出資持分の総口数から当該退社社員が有していた出資持分の口数を控除した後の口数を総口数として、財産評価基本通達194−2の定めにより評価するものとした事例
- 相続税の申告期限前に同族法人に対する貸付金の一部が受贈益として確定しているからその部分について回収不能であるとする請求人の主張を排斥した事例
※最大20件まで表示
税法別に税務訴訟事例を調べる
当コンテンツは著作権法第13条(権利の目的とならない著作物)の規定に基づき、国税不服審判所:公表裁決事例要旨と裁判所:行政事件裁判例のデータを利用して作成されています。