被相続人の損害賠償債務は、制限納税義務者である請求人の相続税の課税上、控除すべき債務には当たらないとした事例
[相続税法][相続税の課税価格の計算][債務控除]に関する裁決事例(国税不服審判所)。
裁決事例(国税不服審判所)
2008/06/25 [相続税法][相続税の課税価格の計算][債務控除]本件取得不動産には、被相続人に対する損害賠償請求権を保全するための仮差押えがされているのみであって、本件相続開始日現在、本件債務に係る留置権、特別の先取特権、質権又は抵当権は成立しておらず、したがって、本件債務は、相続税法第13条第2項第2号に掲げる「その財産を目的とする留置権、特別の先取特権、質権又は抵当権」によって担保される債務には該当しない。
なお、請求人は、相続税法第13条第2項第2号の規定は、制限的ではなく、実質的に解釈して拡大適用する余地があり、本件債務は、本件取得不動産が仮差押えされ、弁済を迫られた結果としての債務であり、同号に掲げる債務と同様の負の効果を有しているのであるから、同号を拡大適用すべき旨主張するが、相続税法第13条第2項の規定は、制限納税義務者が相続又は遺贈により取得した財産から控除できる債務を限定的に列挙したものであるから、同項第2号の規定は、拡大適用すべきでなく、この点に関する請求人の主張を採用することはできない。
また、本件債務は、請求人がG社に対して支払義務を認めた被相続人の損害賠償債務であることから、本件取得不動産に係るその財産の未払取得代金、未払修繕費及び未払管理人賃金などその財産の取得、維持又は管理のために生じた債務には当たらず、相続税法第13条第2項第3号に掲げる債務にも該当しない。
請求人は、本件債務は、仮差押えされた本件取得不動産を財産として維持するための債務であり、同項第3号に掲げる債務に該当する旨主張するが、同号に掲げる債務とは、その財産の未払取得代金、未払修繕費及び未払管理人賃金など、その財産そのものの取得、維持又は管理のために生じた債務をいうものであるところ、本件債務は、本件取得不動産そのものの取得、維持又は管理のために生じた債務とは認められないことから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
本件弁護士費用の内訳は、「本件損害賠償請求権査定申立の件」、「債務弁済契約公正証書作成の件」及び「不動産売却に関するアドバイス」に関するものであり、本件取得不動産そのものの取得、維持又は管理のために生じた債務とは認められないことから、相続税法第13条第2項第3号に掲げる債務には該当しない。
なお、請求人は、本件弁護士費用は、被相続人が生前に、自己の財産を維持し、保全するために要した費用に係る債務であり、請求人にとっても、同様に、相続した本件取得不動産を完全に自己のものとして維持し、保全するためのいわゆるひも付の債務であるから、仮差押えされた本件取得不動産を財産として維持し、保全するために生じた債務であり、相続税法第13条第2項第3号に掲げる債務に該当する旨主張するが、同号に掲げる債務とは、その財産の未払取得代金、未払修繕費及び未払管理人賃金など、その財産そのものの取得、維持又は管理のために生じた債務をいうものであるところ、本件弁護士費用は、本件取得不動産そのものの取得、維持又は管理のために生じた債務とは認められないことから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
平成20年6月25日裁決
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