経営権の譲渡に伴う債権放棄による経済的利益の供与|法人税
質疑応答事例(国税庁)
【照会要旨】
A社及びA社グループは、経営不振により倒産の危機にある子会社において、金融機関の追加融資が困難な状況にあって、かつ、A社も長期化する不況により資金援助ができない状況にあることから、その子会社を解散することとしました。
ところが、甲銀行が幹事となりA社グループとともに、整理又は再建の方策を検討した結果、子会社の解散は社会的影響が大きいことから、B社にその経営権を譲渡することとしました。ただし、その経営権の譲渡に当たっては、子会社の欠損金をA社が補てんすることが条件とされていますので、A社が子会社に対して有する債権を放棄することになりますが、この債権放棄は税務上どのように取り扱われますか。
【回答要旨】
経営権の譲渡に伴う債権放棄による経済的利益の供与は、寄附金ではなく単純損金として認められます。
(理由)
他の企業に経営権を譲渡するような場合、譲受法人としては、その譲受け後における子会社の経営上の責任を考えて、赤字をできるだけ圧縮した上でなければ、譲渡に応じられないという条件を提示することは十分にありうることです。このため、やむを得ず子会社に対する貸付金等の一部を切り捨てたり、新たに資金を投入するなどしてある程度子会社の財政面を改善した上で譲渡するといった事例が見受けられます。
このような貸付金等の切捨てや資金の援助については、親会社として今後発生するであろうより大きな損失を回避するためにやむを得ず行う損失の負担であると認められる場合が少なくありませんので、この損失負担を一概に単純な贈与と決めつけることは適当ではなく、常に寄附金として取り扱うことは実態に即したものとはいえないと考えられます。
従いまして、A社が子会社の経営権の譲渡に伴い、やむを得ず債権の放棄等の損失を負担した場合に、それが今後より大きな損失の生ずることを回避するために行われたものであり、かつ、そのことが社会通念上も妥当なものとして認められるような事情にある場合には、税務上もその債権放棄は寄附金として取り扱わないことが適当と考えられます。
【関係法令通達】
法人税基本通達9-4-1
注記
平成27年7月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。
出典
国税庁ホームページ https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/hojin/13/27.htm
関連する質疑応答事例(法人税)
- 仮決算中間申告における事業所税の未払金計上
- 確定額を限度としている算定方法(利益連動給与)
- 国際戦略総合特別区域において建物を取得しその一部を貸付けの用に供した場合の特別償却
- 全国団体傘下の異なる組織(県団体)の構成員に対する災害見舞金に充てるための分担金に係る法人税法上の取扱いについて
- 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例(措法67の5)の適用対象資産の範囲について(リース資産)
- ゴルフ場について会社更生法の申立てがあった場合のゴルフ会員権に対する貸倒引当金の計上
- 相続財産に含まれる株式が未分割である場合の使用人兼務役員の判定
- 太陽光発電設備の連系工事負担金の取扱いについて
- 風力・太陽光発電システムの耐用年数について
- 工場周辺の住民のためにテレビの共聴アンテナを設置する費用
- 保証機関による保証のある長期棚上げ債権に対する貸倒引当金の繰入れ
- 更生手続中における貸倒損失
- いわゆる「三角合併」に係る具体的な適格判定について
- ゴルフ会員権が分割された場合の取扱い
- 債務超過である子会社が行う支援等についての経済合理性
- 短期前払費用の取扱いについて
- 貨車を倉庫等として使用する場合の耐用年数
- いわゆる屋根貸し事業における環境関連投資促進税制(租税特別措置法第42条の5)の適用について
- 臨海工業地帯の赤松枯損被害に関する企業負担金
- 株価が50%相当額を下回る場合における株価の回復可能性の判断基準について
項目別に質疑応答事例を調べる
当コンテンツは、国税庁ホームページ利用規約に基づき、国税庁:質疑応答事例のデータを利用して作成されています。