絵画等の賃貸料|源泉所得税
[絵画等の賃貸料]に関する質疑応答事例。
質疑応答事例(国税庁)
【照会要旨】
内国法人A社は、海外の美術館等から絵画等(絵画、美術工芸品、遺跡の埋蔵品、恐竜の化石等)を借り受け、展覧会等の用に供していますが、これらの絵画等の賃貸料の支払に当たって源泉徴収は必要ですか。
なお、絵画等の著作権は、著作者の死亡後50年以上経過しているため、消滅しています。
(注) 海外の美術館等は我が国に恒久的施設を有しません。
【回答要旨】
絵画等の賃貸料は、所得税法第161条第7号ハに規定する使用料に該当しますので、源泉徴収が必要です。
もっとも、租税条約締約国の居住者等に支払う場合には、各国との租税条約の規定に応じて次のとおりとなります。
- アメリカ、イギリス、フランス、ノルウェー及びオーストラリアの居住者等に支払うものである場合・・・・・・租税条約上の事業所得条項が適用されるので、我が国の国内に恒久的施設を有しない場合には所得税は課されず、所得税の源泉徴収も要しない。
ただし、租税条約に関する届出を行うことが必要となります。
※租税条約の規定に基づき源泉徴収税額の免除を受けるための手続 - タイの居住者等に支払うものである場合・・・・・・国内法の規定により源泉徴収を要する。
- 及び以外の条約締結国の居住者等に支払うものである場合(イタリア等)・・・・・・租税条約上の使用料条項が適用され、各租税条約に規定された軽減税率による所得税の源泉徴収を要する。
ただし、租税条約に関する届出を行うことが必要となります。
※租税条約の規定に基づき源泉徴収税額の軽減を受けるための手続
(参考)
- 1 所得税法上の取扱い
非居住者(外国法人を含みます。以下同じ。)に対して支払う機械、装置及び用具(車輛、運搬具、工具、器具及び備品)の使用料は、源泉徴収の対象となる国内源泉所得に該当し(所得税法第161条第7号ハ、所得税法施行令第284条第1項)、ここでいう「備品」には、美術工芸品、古代の遺物等も含まれることとされています(所得税基本通達161−27)。
したがって、所得税法上、非居住者に対して支払う絵画等の賃貸料は、その支払の際に源泉徴収を要することとなります(所得税法第212条第1項)。 - 2 租税条約上の取扱い
例えば、日伊租税条約第12条では、「産業上、商業上若しくは学術上の設備」の使用料 については軽減税率を適用する旨を規定しています。ここでいう「設備」とは、英文では「equipment」が用いられており、「equipment」は「設備」のほか「備品」の意味を有します。所得税法の取扱い上、前記のとおり「備品」には、美術工芸品、古代の遺物等も含まれることとしており、租税条約の適用に当たっても国内法と同様に絵画等は「設備」に含まれるものと解されます。
ところで、我が国の締結している租税条約における設備の使用料に関する規定ぶりは、次の3つに大別され、課税関係は次のようになります。
- 設備の使用料を使用料条項に含めていないもの(アメリカ等)・・・・・・事業所得条項が適用され、我が国の国内に恒久的施設がなければ免税となる。
- 設備の使用料を使用料条項に含めておらず、かつ、事業所得条項からも除外しているもの(タイ)・・・・・・租税条約上特段の規定は存在しない所得(いわゆる明示なき所得)であり、日タイ租税条約においては、当該所得を所得源泉地国においても課税できることとしていること(日タイ租税条約第20条第3項)から、国内法の規定による課税関係となる。
- 設備の使用料を使用料条項に含めるもの(イタリア等)・・・・・・当該使用料条項に規定する軽減税率により源泉徴収を要する。
【関係法令通達】
所得税法第161条第7号ハ、第212条第1項、所得税法施行令第284条第1項、所得税基本通達161−27、各国との租税条約、租税条約の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律の施行に関する省令第2条、第9条、第9条の5
注記
平成27年7月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。
出典
国税庁ホームページ https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/gensen/06/08.htm
関連する質疑応答事例(源泉所得税)
- 個人事業当時の期間を通算して退職給与を支給する場合の勤続年数
- 時間外勤務が深夜に及ぶ場合のホテル代
- イタリア法人に支払うコンテナーの使用料
- 定年退職者に対する海外慰安旅行についての課税関係
- 死亡後に支給の確定した退職金の改訂差額
- カフェテリアプランによる医療費等の補助を受けた場合
- カフェテリアプランによるポイントの付与を受けた場合
- ストックオプションに係る国内源泉所得の範囲
- 輸入取立手形のユーザンス金利
- 単身赴任者等に支給するいわゆる着後滞在費
- 「身体障害者手帳の交付を受けている者」が保護者である場合の障害者等の範囲
- 障害者が2キロメートル未満を交通用具で通勤する場合の通勤手当の非課税限度額
- 日米租税条約第20条に規定する交換教授免税における「一時的に滞在する個人」の範囲
- 給与の計算期間の中途で非居住者となった者に支給する超過勤務手当(基本給との計算期間が異なる場合)
- インド輸出入銀行によって保証された借入金の利子
- 非居住者である馬主が支払を受ける競馬の賞金等
- 役員に貸与したマンションの共用部分の取扱い
- 米国支店で使用人として常時勤務する役員の報酬
- 海外における情報提供料
- 吸収合併により消滅会社のストックオプションに代えて存続会社から交付されるストックオプションについて権利行使価額等の調整が行われる場合
項目別に質疑応答事例を調べる
当コンテンツは、国税庁ホームページ利用規約に基づき、国税庁:質疑応答事例のデータを利用して作成されています。