所得税更正処分取消等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成21年(行ウ)第626号)|平成23(行コ)26
[所得税法][事業所得]に関する行政事件裁判例(裁判所)。
行政事件裁判例(裁判所)
平成23年10月6日 [所得税法][事業所得]判示事項
1 自らの経営する病院において不正又は不当な診療報酬を受領したとしてその返還債務を負う者が,同返還債務の金額を事業所得の金額の計算上,総収入額から控除し又は必要経費に算入したところ,現実に履行していない部分の金額を総収入額から控除し又は必要経費に算入することはできないとしてされた所得税の更正処分が,適法とされた事例2 自らの経営する病院において不正又は不当な診療報酬を受領したとして健康保険法等に基づき不正請求にかかる加算金を課された者が,同加算金の金額を事業所得の金額の計算上必要経費に算入したところ,同加算金の金額を必要経費に算入することはできないとしてされた所得税の更正処分が,適法とされた事例
裁判要旨
1 自らの経営する病院において不正又は不当な診療報酬を受領したとしてその返還債務を負う者が,同返還債務の金額を事業所得の金額の計算上,総収入額から控除し又は必要経費に算入したところ,現実に履行していない部分の金額を総収入額から控除し又は必要経費に算入することはできないとしてされた所得税の更正処分につき,不正請求等に係る部分であるとする金額についても,現実にその利益を支配管理し,自己のためにそれを享受して,その担税力を増加させたといえるから,所得税における事業所得の計算上,総収入金額に計上すべきであり,これを控除することはできず,後日これに係る経済的成果が失われた場合には,必要経費に算入することができることになるにとどまるが,所得税法51条2項及び同法施行令の解釈上,無効な行為により生じた経済的成果がその行為の無効であることに基因して失われたといえるのは,本来,無効な行為は,当事者の意思表示等を必要とせず当然にその効力が否定されるものであるから,取消しの場合等と異なり,その行為が無効であることによる利得の返還義務等の発生時期を観念することは困難であり,また,その行為が無効であることが当事者において認識されるに至る経緯や態様も種々あり得るから,損失の発生時期を債務の確定という基準で律することはできないことからすると,明確なメルクマールである利得の返還義務等が現実に履行された時点であると解されるから,診療報酬の金額を該当する保険者へ直接返還することに同意する旨の返還同意書を提出したり,保険者から返還請求が行われているだけでは経済的成果が失われたというには足りず,返還債務を現実に履行した場合に初めて,その経済的成果が失われたものとして,その履行した日の属する年分の事業所得等の金額の計算上,必要経費に算入することができるとして,前記更正処分を適法とした事例2 自らの経営する病院において不正又は不当な診療報酬を受領したとして健康保険法等に基づき不正請求にかかる加算金を課された者が,同加算金の金額を事業所得の金額の計算上必要経費に算入したところ,同加算金の金額を必要経費に算入することはできないとしてされた所得税の更正処分につき,加算金は,診療報酬の不正請求を抑止するという行政目的で設けられた行政制裁としての性格を有しているとしても,一方で,民法704条の特則として支払が求められるものであって,医療機関の保険診療請求の適正化を図るとともに,医療機関が不正請求等を行った場合に生じる経済的損失に係る遅延利息等の損害の賠償を当該経済的損失に対して一定の割合で課すという趣旨に基づく,損害の賠償たる法的性質を有しているとした上,加算金を偽りその他不正の行為によって診療報酬の支払を受けたものとして課された場合は,所得税法45条1項7号,同法施行令(平成21年政令第104号による改正前)98条の2にいう故意又は重大な過失によって他人の権利を侵害したことによる損害賠償金又はそれに類するものに該当するから必要経費に算入することはできないとして,前記更正処分を適法とした事例
- 裁判所名
- 東京高等裁判所
- 事件番号
- 平成23(行コ)26
- 事件名
- 所得税更正処分取消等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成21年(行ウ)第626号)
- 裁判年月日
- 平成23年10月6日
- 分野
- 行政
- 全文
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- 所得税更正処分取消等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成21年(行ウ)第626号)|平成23(行コ)26
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