合併存続法人に生じた欠損金額を被合併法人の所得金額を対象として欠損金の繰戻請求を認めるべきであるとの請求人の主張に対して、合併存続人と被合併法人では法人格が異なることから還付請求は認められないとして、これを排斥した事例
裁決事例(国税不服審判所)
2000/06/21 [法人税法][申告、納付及び還付等] 商法第103条[合併の効果]は、吸収合併の場合、合併存続法人が被合併法人の権利義務を承継する旨規定しているところ、この合併により合併存続法人が承継する権利義務は、被合併法人の私法上の実質的な積極的、消極的財産であって、計算上の数額である資本や各準備金、あるいは単なる経理計算関係などはこれに該当するものではなく、また、被合併法人の公法上の権利義務が合併存続法人に承継されるかどうかは、当該公法上の権利義務の性質によって個別に検討されるべきものである。
そして、法人税法第81条第1項の規定は、法人税は各事業年度ごとに所得金額を算定し、これによって課税する原則の例外として青色申告法人に限り欠損金の繰戻しの制度を認めているものであるが、前述のとおり計算関係にすぎない合併存続法人の欠損金が合併の効果として合併前の被合併法人に当然に及ぶと解することはできず、その繰戻しが認められるためには法人税法上、別段の根拠が必要であると解される。しかしながら、同条の欠損金の繰戻し制度について、合併後の合併存続法人の欠損金につき、合併前の被合併法人の所得についてまで及ぶことを認めた規定はない。
また、この制度は各事業年度ごとの所得によって課税する原則を貫くと各事業年度を通じて所得計算をする場合に比して、税負担が加重となる場合が生ずるので、これを緩和して当該法人の企業活動の健全を期待保障しようとするものであるから、この趣旨からして欠損金の繰戻しが許されるには当該法人が人格の同一性を保っていることを前提とするものと解されるところ、合併存続法人と被合併法人は人格の同一性を保っているということはできないことから、請求人の主張を認めることはできない。
平成12年6月21日裁決
- 国税不服審判所:公表裁決事例集:公表裁決事例要旨
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