営業譲渡代金の一部から株式譲渡代金名下で個人株主に金員を交付したことが、法人の解散を前提とする残余財産の分配に当たるとした事例
裁決事例(国税不服審判所)
2007/12/21 [国税徴収法][第二次納税義務] 請求人は、本件営業譲渡日に滞納法人の個人株主Bらが受領した金員は、滞納法人の株式の譲渡代金であるとともに、同日は滞納法人の解散決議前であるから、当該金員は国税徴収法第34条の「残余財産の分配」によるものではないと主張する。
しかしながら、本件滞納法人は、本件営業譲渡日に、本件滞納法人の代表者である請求人とその親族が全株式を所有する本件滞納法人の筆頭株主であるC社に対する債務を除き、資産・負債のすべてをD社に譲渡するとともに、従業員もD社に引き継いでいること、D社は、当該金員を営業譲渡代金の一部と認識し、その旨の経理をしていること、本件営業譲渡日において本件滞納法人は債務超過と認められ、その株式に経済的価値はなく、D社が当該株式を取得する経済的合理性も必要性も認められないこと、本件滞納法人の株式の譲渡に必要な取締役会の承認がなされていないこと、請求人は本件営業譲渡に際し、Bら個人株主を含む従業員に迷惑を掛けたくないと考えていたこと、Bら個人株主が受領した金員は、本件滞納法人への出資相当額であること、本件滞納法人は、本件営業譲渡日から解散決議に至るまで何ら資産を有せず、事業活動も行っていないことからすると、本件営業譲渡は解散を前提として行われたものと認められ、Bら個人株主が受領した金員は、株式譲渡代金ではなく、本件営業譲渡の対価の一部を分配したものと認められるから、当該金員の交付は、国税徴収法第34条に規定する「法人が解散した場合における残余財産の分配」に当たり、請求人はその価額を限度として同条の第二次納税義務を負うこととなる。
平成19年12月21日裁決
- 国税不服審判所:公表裁決事例集:公表裁決事例要旨
- 営業譲渡代金の一部から株式譲渡代金名下で個人株主に金員を交付したことが、法人の解散を前提とする残余財産の分配に当たるとした事例
関連するカテゴリ
関連する裁決事例(国税徴収法>第二次納税義務)
- 滞納者が行った集合住宅の売却について、国税徴収法第39条に規定する無償譲渡等に該当するとした事例
- 職務に直接関与しない清算人に対する第二次納税義務の告知処分について適法であるとした事例
- 連帯納付義務者Lから不動産の贈与を受けた者に対して行われた国税徴収法第39条の規定に基づく第二次納税義務の告知処分が適法であるとした事例
- 会社法第762条の規定に基づく新設分割によって滞納法人の事業を承継した請求人は国税徴収法第38条の規定による第二次納税義務を負うとした事例
- 同族会社の判定の基礎となった株主が、その同族会社の滞納国税の内容及び発生過程を知らされていなくとも、国税徴収法第37条に規定する第二次納税義務は成立するとした事例
- 遺産分割協議により自己の相続分を超える不動産の持分を取得したことが国税徴収法第39条の第二次納税義務の規定に該当するとした事例
- 請求人が納税者から不動産を譲り受けたことが、国税徴収法第39条に規定する「著しく低い額の対価による譲渡」に当たらないとした事例
- 滞納者から金銭の贈与を受けたことを理由とする国税徴収法第39条に基づく第二次納税義務の告知処分は相当であるとした事例
- 同族会社の判定の基礎となった株主が当該同族会社に無償で貸与していた不動産が、当該同族会社の事業の遂行に欠くことができない重要な財産に当たるとした事例
- 会社法第757条の規定に基づく吸収分割によって滞納法人の事業を承継した請求人は国税徴収法第38条の規定による第二次納税義務を負うとした事例
- 債務の弁済を滞納会社から受けたことについて、同社からの利益の享受に当たらないとした事例
- 法人税法上役員賞与としたものを無償譲渡と認めて第二次納税義務を課しても矛盾がないとした事例
- 国税徴収法第39条の無償譲渡等の処分の効力発生時期につき、請求人が父から贈与された農地については所有権移転に係る農地法上の許可を受けていないことから、その他の不動産等については贈与された時若しくは請求人がその不動産等に係る第三者対抗要件を具備した時のいずれに解しても、同条の「国税の法定納期限の1年前の日以後に無償譲渡等の処分が行われたこと」という要件が充足されていないとした事例
- 第二次納税義務の納付告知処分の「受けた利益の限度」の額は、譲り受けた財産等の価額から無償譲渡等の処分と直接対価性のある支出又は負担を控除した残額であることを明らかにした事例(第二次納税義務の納付告知処分・棄却・平成26年9月9日裁決)
- 営業譲渡代金の一部から株式譲渡代金名下で個人株主に金員を交付したことが、法人の解散を前提とする残余財産の分配に当たるとした事例
- 滞納者の詐害の意思の有無は、国税徴収法第39条の第二次納税義務の成立要件ではないとした事例(第二次納税義務の納付告知処分・棄却・平成27年1月19日裁決)
- 妻名義で購入した不動産は、自己資金により購入した固有財産であると認定することにより無償譲渡に該当しないとした事例
- 国税徴収法第39条が規定する「受けた利益」が取引相場のない株式である場合において、同条の第二次納税義務の限度額の算定に当たり、原処分庁がディスカウント・キャッシュ・フロー法と時価純資産法を併用して当該株式を評価したことに不合理な点は認められないとした事例(第二次納税義務の納付告知処分・一部取消し・平成27年10月28日裁決)
- 国税徴収法第38条にいう「譲受財産」とは、積極財産のみをいい、消極財産を含まないと解するのが相当であるとした事例
- 相続税法第34条の連帯納付義務者から金銭の贈与を受けた者に対する国税徴収法第39条の第二次納税義務の告知処分が適法であるとした事例
※最大20件まで表示
税法別に税務訴訟事例を調べる
当コンテンツは著作権法第13条(権利の目的とならない著作物)の規定に基づき、国税不服審判所:公表裁決事例要旨と裁判所:行政事件裁判例のデータを利用して作成されています。