相続税法第34条の連帯納付義務者から金銭の贈与を受けた者に対する国税徴収法第39条の第二次納税義務の告知処分が適法であるとした事例
[国税徴収法][第二次納税義務]に関する裁決事例(国税不服審判所)。
裁決事例(国税不服審判所)
2003/06/26 [国税徴収法][第二次納税義務]国税徴収法第39条と詐害行為取消しとの関係 国税徴収法第39条の第二次納税義務は、滞納者の悪意を要件としていないものと解されていることに加えて、無償譲渡等の処分のみを対象としていること、無償譲渡等の処分が国税の法定納期限の1年前の日以後にされたものであること、特殊関係者を除き、利益が現に存する限度に限られること、訴訟手続は要しないことなどの点において詐害行為取消しとは法律的構成を異にしている。また、国税通則法第42条は民法第424条の準用規定であるにもかかわらず、それとは別に国税徴収法第39条が設けられていることなどを考えれば、この制度の目的は、徴税手続の合理化及び効率化を図ることにあると解すべきである。
そうすると、国税徴収法第39条の適用においては、無償譲渡等の行為が詐害行為等に該当するか否かの判断まで求められるものではなく、同条が明文で規定するすべての要件を充足すれば当然に適用が可能であると解するのが相当である。
合理的理由に基づく贈与と国税徴収法第39条との関係 請求人は、無償譲渡等の処分に関し、東京地裁昭和45年11月30日判決を引用して、贈与が合理的な理由に基づく場合には国税徴収法第39条を適用すべきでない旨主張する。
しかしながら、請求人が引用する同判決は、金銭の授受に対価性があると認定された事例であって、本件とは前提を異にするし、本件贈与が請求人のいう「子あるいは血縁の者や親交の深い者に対して贈与税を支払った上でなされた一般的な形態」のものであるならば、正に国税徴収法第39条に規定する無償譲渡等の処分に該当することとなるのであるから、この点についての請求人の主張は採用できない。
「法定納期限の1年前の日」の解釈 国税徴収法第39条の「法定納期限の1年前の日」については、請求人が主張するように解すべき法令上の規定はなく、本件の場合、A(第二次納税義務の主たる納税義務者、相続税の連帯納付義務者)の法定納期限は、B(相続税の本来の納税義務者)の法定納期限である平成4年1月20日と同一と解されるところ、その1年前の日の平成3年1月20日が「法定納期限の1年前の日」に当たると解するのが相当である。
なお、請求人のいう不合理は、徴収不足と無償譲渡等との基因関係の問題で処理されるべきものであって、本件の場合とは前提を異にし、また、お知らせ文書や督促状を受けてから8年以上も遡って第二次納税義務を負うという異常な結果を招来するという指摘については、第二次納税義務に除斥期間はなく、無償譲渡等後8年経過していたとしても、それをもって第二次納税義務の対象としないということはできない。
おって、請求人は、相続税法第34条第1項の連帯納付義務についても告知が必要である旨主張するが、国税通則法第36条第1項が納税の告知を要する場合として列挙する各号は限定的なものと解されており、また、相続税法第34条第1項について告知を要する旨を定めた法令上の規定はないことから、採用できない。
第二次納税義務の補充性 国税徴収法第39条に規定する「徴収すべき額に不足すると認められる場合」とは、納付通知書を発する時の現況において、納税者に帰属する財産で滞納処分により徴収できるものの価額が、滞納国税の総額に満たないと認められることをいうと解されるところ、補充性の判断においては、納税者に帰属する財産の減価理由までも要求するものではないことは明らかであるし、また、第二次納税義務者に対し、主たる納税義務者である相続税法第34条第1項に基づく連帯納付義務者のその本来の納税義務者に係る延納の担保の内容等を明らかにすべき旨を定めた法令上の規定はなく、この点についての請求人の主張は採用できない。
なお、請求人は、Aが「相続により受けた利益の価額」は、取得した財産の価額から相続税法第19条の2規定の適用前の相続税額を控除した額であると主張するが、取得した財産の価額から控除するのは現に納付すべき相続税であると解するのが相当である。
Aの連帯納付義務 第二次納税義務の納付告知を受けた者は、主たる納税義務が不存在又は無効でない限り、当該納付告知の取消しを求める訴えにおいて、主たる納税義務の存否又は数額を争うことはできないと解されており、また、相続税法第34条第1項の連帯納付義務は、相続税の徴収を確保するため、相互に各相続人等に課した特別の責任であって、その義務履行の前提条件をなす連帯納付義務の確定は、各相続人等の固有の相続税の納税義務の確定という事実に照応して、法律上当然に生ずるものであると解されている。
これを本件についてみると、主たる納税義務の不存在又は無効とは、主たる納税義務が相続税法第34条第1項の連帯納付義務の場合、連帯納付義務の不存在又は無効の判断は、本来の納税義務が不存在又は無効であるかにより判断すべきところ、Bの申告手続に無効となるべき重大かつ明白な瑕疵は認められないことから、Aの連帯納付義務の違法等を理由に本件告知処分は違法であるとする請求人の主張は採用できない。
平成15年6月26日裁決
- 国税不服審判所:公表裁決事例集:公表裁決事例要旨
- 相続税法第34条の連帯納付義務者から金銭の贈与を受けた者に対する国税徴収法第39条の第二次納税義務の告知処分が適法であるとした事例
関連するカテゴリ
関連する裁決事例(国税徴収法>第二次納税義務)
- 営業譲渡代金の一部から株式譲渡代金名下で個人株主に金員を交付したことが、法人の解散を前提とする残余財産の分配に当たるとした事例
- 滞納会社の家賃収入計上漏れ等により生じた簿外の金員を取得した代表者に対する第二次納税義務の告知処分は相当であるとした事例
- 滞納法人が行った債権放棄と同法人の滞納国税の徴収不足との間に基因関係が認められるとした事例
- 請求人が納税者から不動産を譲り受けたことが、国税徴収法第39条に規定する「著しく低い額の対価による譲渡」に当たらないとした事例
- 滞納会社の所有する土地持分の上に請求人が建物を新築するに当たり、借地権の無償設定によって国税徴収法第39条にいう利益を受けたものと認定した事例
- 遺産分割協議により自己の相続分を超える不動産の持分を取得したことが国税徴収法第39条の第二次納税義務の規定に該当するとした事例
- 滞納者の詐害の意思の有無は、国税徴収法第39条の第二次納税義務の成立要件ではないとした事例(第二次納税義務の納付告知処分・棄却・平成27年1月19日裁決)
- 請求人が受領した滞納会社の売掛金のうち、滞納会社の従業員に対する給与に充てられた部分以外の部分は、国税徴収法第39条の無償譲渡等の処分によるものであるとした事例
- 財団法人に対する寄附は、国税徴収法第39条に規定する無償譲渡等に当たるとした事例
- 滞納者が受け取るべき信託受益権の譲渡代金の残余金等のうち、滞納者の債務を弁済した後に生じた余剰金は、実質的に滞納者から請求人に対する無償譲渡と認められるとした事例
- 貸金業を営む請求人の貸金債権についての保証業務を行っていた滞納法人が業務を廃止したことに伴い、請求人が滞納法人から収受したといえる業務廃止日現在の累計保証料相当額から貸倒額を控除した部分は、国税徴収法第39条の無償譲渡等の処分によるものであるとした事例
- 請求人が滞納法人の株主又は社員と認めるに足る証拠はないとして、国税徴収法第37条の規定に基づく第二次納税義務の納付告知処分を取り消した事例
- 職務に直接関与しない清算人に対する第二次納税義務の告知処分について適法であるとした事例
- 滞納者を契約者兼被保険者とし、保険金受取人を請求人とする生命保険契約に基づいて死亡保険金を受領した請求人は、国税徴収法第39条の規定により、滞納者が払込みをした保険料相当額の第二次納税義務を負うとした事例
- 同族会社の判定の基礎となった株主が、その同族会社の滞納国税の内容及び発生過程を知らされていなくとも、国税徴収法第37条に規定する第二次納税義務は成立するとした事例
- 「滞納者の国税につき滞納処分を執行してもなおその徴収すべき額に不足すると認められる場合」に該当しないとする請求人の主張を排斥した事例
- 滞納者から金銭の贈与を受けたことを理由とする国税徴収法第39条に基づく第二次納税義務の告知処分は相当であるとした事例
- 国税徴収法第38条の第二次納税義務の告知処分に至る手続に違法があり、また、納付相談の要請を了解したにもかかわらず、この了解事項を一方的に破棄して告知処分を行ったことは、信義則に反するとの請求人の主張が排斥された事例
- 贈与があったことを前提としてなされた第二次納税義務告知は、受領した金員の性質を誤認したものであり、取り消しするのが相当であるとした事例
- 債務の弁済を滞納会社から受けたことについて、同社からの利益の享受に当たらないとした事例
※最大20件まで表示
税法別に税務訴訟事例を調べる
当コンテンツは著作権法第13条(権利の目的とならない著作物)の規定に基づき、国税不服審判所:公表裁決事例要旨と裁判所:行政事件裁判例のデータを利用して作成されています。