他人の依頼を受けて請求人の所得としてした確定申告に係る滞納国税について請求人の財産に対して行った差押えは違法ではないとした事例
裁決事例(国税不服審判所)
1991/12/06 [国税徴収法][総則]裁決事例集 No.42 - 249頁
請求人は、滞納国税が譲渡所得に起因するものであるところ、本件譲渡所得を請求人の所得として確定申告したのは、本件譲渡所得の真の所得者であるA男からの依頼があったためであり、本件滞納国税はA男から徴収すべきであるから、請求人の財産に対して行った差押えは違法である旨主張するが、所得税は、申告納税方式をとっているところ、申告納税制度における課税標準、税額等の申告は、納税者たる私人のする行為であるが、これに対しては、納付すべき税額の確定等公法上の法律効果が付与されており、したがって、納税義務者が第三者に帰属する所得を自己の名義で納税申告することは法の全く予定していないところであり、納税申告は、外観上一見して当該納税義務者本人のものでないと判断できるような場合でない限り、当該納税義務者本人に対して、納税義務の確定という公法上の法律効果を及ぼすものであって、その他の第三者に納税義務が生じることはないし、また、滞納処分は、それに先行する確定申告に係る行為とは別個独立の行政処分であるから、当該納税義務者に係る税額が確定申告により一応形式的に確定している場合には、確定申告書の記載内容のかしが客観的に明白、かつ、重大である場合を除いては、当該確定申告に、仮にかしが存するとしても、滞納処分が違法となることはないと解するのが相当であるところ、本件滞納国税が本件譲渡所得に起因するものであり、仮に、本件譲渡所得がA男に帰属すべきものであったとしても、本件申告書に重大かつ明白なかしがない以上、請求人以外の第三者であるA男が本件申告書により確定した税額の納税義務者となることはあり得ないのであるから、請求人の財産に対して行った差押えは違法である旨の請求人の主張には理由がない。
平成3年12月6日裁決
- 国税不服審判所:公表裁決事例集:公表裁決事例要旨
- 他人の依頼を受けて請求人の所得としてした確定申告に係る滞納国税について請求人の財産に対して行った差押えは違法ではないとした事例
関連するカテゴリ
関連する裁決事例(国税徴収法>総則)
- 相続税の納税義務が不存在であることを理由として差押えの取消しを求めることはできないとした事例
- 課税処分の取消訴訟が係属中であっても、課税処分の効力は妨げられず滞納処分は続行されるとともに、課税処分と滞納処分はそれぞれ目的を異にする別個独立した行政処分であるから、違法性は承継されないとした事例
- 1. 遺産の審判分割を原因とする本件各課税処分に重大かつ明白な瑕疵が存在するとは認められず、当然無効でない以上、課税処分とは別個独立の行政処分である本件差押処分の取消しを求めることはできない。2. 相続財産である本件株券は適法、有効に発行されたものと認められるところ、原処分庁は、その交付請求権の差押権者として取立権を行使し、給付を受けて有価証券として差押処分をしたものであり、本件差押処分は適法、有効である。3. 公売期日に公売が実施されず、その期日が経過しており、本件公売処分は不存在であるから、審査請求はその対象を欠く不適法なものとして却下すべきある。
- 源泉徴収に係る所得税の納税告知処分の違法性は滞納処分に承継されないとした事例
- 遺産分割協議の無効確認を求めて訴訟中であることを理由に、当該遺産分割に基づく相続税の滞納のためにした請求人の固有財産に対する差押処分の取消しを求めることはできないとした事例
- 他人の依頼を受けて請求人の所得としてした確定申告に係る滞納国税について請求人の財産に対して行った差押えは違法ではないとした事例
- 請求人の被相続人が提出した確定申告書は、被相続人が現処分庁所属の担当職員の言われるままに署名押印し、その内容について納得せずに提出したものであり無効であるから、無効な確定申告により確定した滞納国税を徴収するため行われた差押処分も違法であるとの主張を排斥した事例
- 更正の違法を理由として参加差押えの取消しを求めることはできないとした事例
- 源泉所得税の納税告知等の違法を理由として差押えの取消しを求めることはできないとした事例
- 共同相続人の相続税の申告は錯誤に基づく無効な申告であるとは認められないから、相続税法第34条に基づく差押処分は適法であるとした事例
税法別に税務訴訟事例を調べる
当コンテンツは著作権法第13条(権利の目的とならない著作物)の規定に基づき、国税不服審判所:公表裁決事例要旨と裁判所:行政事件裁判例のデータを利用して作成されています。