所得税更正処分取消請求事件|平成3(行ウ)100
[所得税法][事業所得][推計課税]に関する行政事件裁判例(裁判所)。
行政事件裁判例(裁判所)
平成6年6月8日 [所得税法][事業所得][推計課税]判示事項
1 いわゆる比準同業者の平均値を用いた推計による課税において必要とされる推計方法の合理性の程度 2 納税者が推計課税に対して必要経費についての実額を主張する場合において総収入金額と必要経費とが対応するものであることを主張立証することの要否 3 写真現像焼付取次業,感光材料及びカメラ用品販売業等を営む申告者の事業所得の金額につき,実額で把握した仕入金額等を基に,比準同業者の平均原価率及び平均一般経費率を用いて総収入金額及び一般経費を推計してした所得税の更正が,適法とされた事例裁判要旨
1 推計による課税は,納税者の所得金額を直接資料によって把握することができない場合に,やむを得ず間接資料によって推計した金額をもって真実の所得金額に近似するものとして認定し,課税するものであるところ,比準同業者の平均値を用いた推計による課税について,納税者と比準同業者との類似性を過度に要求することは,推計の方法による課税自体を不可能にすることになりかねず,所得税法が推計による課税を認めている以上,業種及び業態,事業所の近接性,事業規模等の基本的な要因において比準同業者の抽出が合理的であれば,比準同業者間に通常存在する程度の個別的な営業諸条件の差異は,それが推計を不合理ならしめる程度に顕著なものでない限り,その平均値を算出する過程で捨象され,推計方法の合理性に影響を及ぼすものではないというべきである。 2 納税者は,推計課税に対して必要経費についての実額を主張して推計額を争う場合においては,所得税法37条1項に照らし,その主張する必要経費が係争年分の総収入金額と対応するものであることを合理的な疑いをいれない程度に立証する必要があるから,自ら主張する収入金額が当該係争年度分のすべての取引から生じたすべての収入であることを主張立証してその期間内に支出した必要経費との対応関係を立証するか,又は自ら主張する必要経費とその収入とが個別的に対応するものであることを主張立証しなければならないものというべきであるが,納税者の主張する売上金額に捕そく漏れのあることが必ずしもうかがわれず,かつ,その主張する収入及び必要経費の金額を基に算出した所得率等が,比準同業者の所得率等の平均値に近似するような場合には,経験則上,納税者の主張する収入金額が前記のすべての収入によるものであることが推認されるといえる。 3 写真現像焼付取次業,感光材料及びカメラ用品販売業等を営む者の事業所得の金額について,取引先に対する反面調査等により把握した仕入金額及び外注費の金額を基に,比準同業者の平均原価率及び平均一般経費率を用いて総収入金額及び一般経費を推計してした所得税の更正が,推計の必要性が認められ,かつ,比準同業者の抽出が基本的な要因において合理的であり,推計方法を不合理ならしめる程度に顕著な比準同業者間の個別的な営業諸条件の差異もないから,推計の合理性も認められるとした上,実額の主張については,その主張する総収入金額等に基づく売上原価率は前記比準同業者のそれを超えるものであり,その主張する収入金額が収入のすべてであることも,必要経費と収入金額との個別具体的な対応関係も認められないから,採用できないとして,適法とされた事例- 裁判所名
- 東京地方裁判所
- 事件番号
- 平成3(行ウ)100
- 事件名
- 所得税更正処分取消請求事件
- 裁判年月日
- 平成6年6月8日
- 分野
- 行政
- 全文
- 全文(PDF)
- 裁判所:行政事件裁判例
- 所得税更正処分取消請求事件|平成3(行ウ)100
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