土地の譲渡が「収用の対償に充てるために買い取られる場合」に該当しないとして、租税特別措置法第34条の2の規定の適用が認められないとした事例
裁決事例(国税不服審判所)
2008/03/11 [租税特別措置法][所得税法の特例][譲渡所得の特例][長期譲渡所得に係る課税の特例] 県企業局も県農林水産部も、それぞれの設置の根拠法令は異なるものの、いずれも県知事の管轄下にある補助機関であり、県の行政組識の一構成機関であると認められる。そうすると、県企業局がその事業の用に供するために、県農林水産部が管理・使用している事業用地を自らの管理下に移転させる場合には、財産管理者である県農林水産部との間で管理換えの手続を取ることとなる。そして、本件においても当該管理換えの手続が取られたものであり、そのことは、本件管理換え協定書からも明らかである。さらに、県農林水産部から県企業局への管理換えがあった平成17年2月7日の前後を通じ、本件事業用地の所有者がA県となっていることからも、収用又は買取りがなされたものではないことが認められる。
以上のことから、県企業局への本件事業用地の管理の移転は、土地収用法等による収用でもなければ、資産についての買取りの申出を拒むときは収用されることとなる場合の買取り、すなわち収用権を背景とした買取りでもないこととなる。
租税特別措置法第34条の2第1項は、個人の有する土地等を特定住宅地造成事業等のために譲渡した場合には、一定の要件の下に譲渡所得の金額の計算上1,500万円が控除される旨を規定しており、この特例(以下「本件特例」という。)の対象となる譲渡として、同条第2項第2号において「(措置法)第33条第1項第1号に規定する土地収用法等に基づく収用(同項第2号の買取り‥‥‥を含む。)を行う者若しくはその者に代わるべき者として政令で定める者によって当該収用の対償に充てるため買い取られる場合」が規定されている。
このような譲渡が本件特例の対象とされているのは、公共事業の施行者が土地等を収用等により円滑に取得するためには、事業用地の譲渡者に対して代替地を提供することが必要不可欠である場合もあることから、公共事業の施行者が代替地として提供するために必要な土地、すなわち対償地を容易に取得できるようにとの趣旨からであると解され、同法第34条の2第1項の規定は、税負担の軽減の特例又は例外規定であって、その解釈及び適用は厳格でなければならないというべきである。
本件についてみると、上記のとおり本件事業用地の管理換えは、収用又は収用権を背景とした買取りではないから、県企業局は、同法第34条の2第2項第2号に規定する収用を行う者若しくはその者に代わるべき者として政令で定める者には該当せず、また、本件譲渡物件の県農林水産部への提供についても、同号に規定する収用の対償に充てるために買い取られる場合に該当しない。よって本件土地の譲渡については、本件特例を適用することはできない。
平成20年3月11日裁決
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