取引相場のない株式の評価を純資産価額方式で行うに当たって、評価会社が土地収用に伴い取得した代替資産の価額は、圧縮記帳後の価額ではなく財産評価基本通達の定めにより評価した価額によるのが、また、評価会社が保有する上場会社が発行した非上場の優先株式の価額は、その上場会社の株式の価額ではなく払込価額により評価した価額によるのが相当であるとして、請求人の主張を排斥した事例
裁決事例(国税不服審判所)
2006/04/11 [相続税法][財産の評価][土地及び土地の上に存する権利] 請求人らは、相続により取得した取引相場のない株式の価額を純資産価額方式で算定するに当たって、評価会社が土地・建物等の収用等に伴って取得した代替資産については租税特別措置法第64条の2の規定を適用したことにより算出されるその資産の取得価額を、また、上場会社の発行した非上場の無額面株式(優先株式)についてはその上場会社の上場株式と同様に評価した価額を、それぞれ基として評価すべきであると主張する。
しかしながら、財産評価基本通達(以下「評価通達」という。)185は、1株当たりの純資産価額を課税時期において評価会社が所有する各資産を評価通達に定めるところにより評価した価額を基礎に計算する旨定めるとともに、この場合、評価会社が課税時期前3年以内に取得又は新築した家屋等の価額は、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価する旨定めている。この家屋等についての取扱いは、純資産価額の計算において、課税時期の直前に取得又は新築し、通常の取引価額が明らかなものについてまで、わざわざ、評価通達に基づく評価替えを行うことは時価の算定上、適切でないと考えられることによるものであり、当審判所においても相当と認められるところ、本件代替資産は新たに取得又は新築されたものであること及び租税特別措置法第64条の2の規定からすれば圧縮記帳後の価額は法人税法に関する法令の規定を適用する場合のものであることが認められ、これらのことからすれば、請求人らが主張する本件各代替資産の圧縮記帳後の価額をもって、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額である客観的な交換価額を示すものであると認めることはできない。
また、評価通達には、本件優先株式に直接適用できる評価方法は定められていないところ、評価通達5によれば、評価通達に定めのない場合は、類似する資産の評価方法に準じて評価することとしている。この点に関し、原処分庁は、本件優先株式は平成14年7月4日付国税庁課税部資産課税課情報第10号ほか1「資産税関係質疑応答事例について(情報)」(以下「本件情報」という。)に掲げた内容と同様のものであるから、本件情報に基づいて本件優先株式を評価していることが認められるところ、当審判所においてもこの本件情報に基づく評価方法を不相当とする理由があるとは認められないから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
平成18年4月11日裁決
- 国税不服審判所:公表裁決事例集:公表裁決事例要旨
- 取引相場のない株式の評価を純資産価額方式で行うに当たって、評価会社が土地収用に伴い取得した代替資産の価額は、圧縮記帳後の価額ではなく財産評価基本通達の定めにより評価した価額によるのが、また、評価会社が保有する上場会社が発行した非上場の優先株式の価額は、その上場会社の株式の価額ではなく払込価額により評価した価額によるのが相当であるとして、請求人の主張を排斥した事例
関連するカテゴリ
関連する裁決事例(相続税法>財産の評価>土地及び土地の上に存する権利)
- 取引相場のない株式につき発行会社との間で譲渡価額を額面価額による旨を誓約している場合において、額面価額による評価は採用できないとした事例
- 堅固な建物の存する土地に隣接する駐車場については借地権が存在しないとした事例
- 評価対象地は、道路を開設するなどした開発を行うことが最も合理的であり、「広大地」として評価するのが相当であるとした事例
- 相続により取得した建物の周囲にある緑化設備は、共同住宅の敷地内に設けられた構築物であるから、財産評価基本通達97の定めにより評価すべきであるとした事例
- 「相当の地代を収受している貸宅地の評価について」通達により、被相続人から土地を借り受けている同族法人の株式の評価上、純資産価額に計上される当該土地の価額の20%に相当する金額は、土地保有特定会社を判定する際の「土地等の価額」に含まれるとした事例
- 相続税の申告期限前に同族法人に対する貸付金の一部が受贈益として確定しているからその部分について回収不能であるとする請求人の主張を排斥した事例
- 評価対象地につき、路地状開発により戸建分譲を行うことが経済的に最も合理性のある開発に当たる場合には、公共公益的施設用地の負担の必要性がないため、財産評価基本通達24−4(広大地の評価)の適用はないとした事例
- 実際地積が固定資産税評価額算定上の課税地積と異なる土地の倍率方式による評価額について実際地積により評価すべきであるとした事例
- 医療法人の出資持分の評価は財産評価基本通達に定める方法により算定した価額が相当であるとした事例
- 親族の居住用家屋の敷地の用に供されていた宅地は使用借権の付着した宅地として、樹苗地として低い賃料で法人に賃貸されていた畑地は、賃借権の付着した雑種地として評価するのが相当とした事例
- 戸建住宅の敷地として分譲開発した場合に公共公益的施設用地の負担は必要ないことから広大地には該当しないとした事例
- 財産評価基本通達の定めにより配当還元方式で評価されることを利用して贈与税の負担の軽減を図る目的で取得した本件株式については、時価純資産価額を基に評価するのが相当であるとした事例
- 相続によって取得した土地が無道路地に当たらないとした事例
- 贈与財産である宅地について、借地権の存する土地として評価するのが相当とした事例(?平成21年分の贈与税の更正処分、?平成21年分の贈与税に係る過少申告加算税の賦課決定処分・?一部取消し、?全部取消し・平成26年5月9日裁決)
- 協業組合の出資の評価については、評価基本通達179を適用して評価することが相当とした事例
- 周知の埋蔵文化財包蔵地については発掘調査費用の額の80%相当額を控除して評価することが相当であるとした事例
- 評価対象地は、既に開発行為を了した共同住宅の敷地として有効に利用されていることから、「広大地」には当たらないとした事例
- 相続税評価額は審判所が算定した時価を上回っているとして、時価を上回る価額による処分の一部を取り消した事例
- 中古車展示場用地としての本件土地の賃貸借契約は、その土地使用の主たる目的がその地上に建物を建造し、所有することには当たらないとして、本件土地は、貸宅地として借地権を控除して評価することはできないとした事例
- 存続期間が100年を超える地上権の設定であっても、建物の所有を目的とする場合には借地法の法的保護の下にあるから、相続税法第23条“地上権及び永小作権の評価”の適用はないとした事例
※最大20件まで表示
税法別に税務訴訟事例を調べる
当コンテンツは著作権法第13条(権利の目的とならない著作物)の規定に基づき、国税不服審判所:公表裁決事例要旨と裁判所:行政事件裁判例のデータを利用して作成されています。