合併の際、被合併法人から上場株式を著しく低い価額で受入れ、作為的に評価差額を創り出した場合には、純資産価額方式による取引相場のない株式の評価上、その創り出された評価差額に対する法人税等相当額を控除することはできないとした事例
[相続税法][財産の評価][土地及び土地の上に存する権利]に関する裁決事例(国税不服審判所)。
裁決事例(国税不服審判所)
2000/07/12 [相続税法][財産の評価][土地及び土地の上に存する権利]被相続人らは、あらかじめA社の子会社であるB社の営業譲渡を行わせ、これにより形骸化した同社の株式すべてをを買収した上、C社を吸収合併する方法によってC社が保有する有価証券のうち、A社の株式を時価に比して著しく低い価額で受け入れ、もってA社の株式の帳簿価額をおよそ20分の1に圧縮し、評価通達に定める純資産価額計算上の評価差額を創り出したものである。
このような特異な取引が行われたのは、被相続人らがD社の指導の下で、同社の企画を実行したもので、被相続人らの行為は、被相続人の保有するA社の株式についての相続対策を行う目的のみで行われたものであることは明らかである。
評価差額に対する法人税等相当額を控除するのは、個人事業者が個々の事業用資産を直接所有している場合と株式の保有を通じて会社の資産を間接的に保有している場合との均衡を図るものであるが、本件のように租税負担の軽減を図って作為的に評価差額を創り出した場合まで、当該評価差額に対する法人税等相当額を控除することは同通達の趣旨を著しく逸脱するものであって、このような保有形態を利用していない一般の納税者の租税負担を考慮すれば、課税公平の観点からみても、看過し難いものである。
そうすると、本件株式については、評価通達に定める方法によって評価することが著しく不適当となる特別の事情があると認められることから、評価通達6の定めにより合併によって創り出された評価差額に対する法人税等相当額を控除せずに計算した金額が相続税法22条の「時価」に当たると解するのが相当である。請求人らは、客観的価値としての株式の時価を算定するに当たって、法人税等相当額を控除するのは当然であると主張するが、評価差額に対する法人税等相当額を控除して評価するのは、むしろ特殊な条件下における価額を求めるものであるから、かかる事態を本件株式の評価上考慮すべき理由はない。
平成12年7月12日裁決
- 国税不服審判所:公表裁決事例集:公表裁決事例要旨
- 合併の際、被合併法人から上場株式を著しく低い価額で受入れ、作為的に評価差額を創り出した場合には、純資産価額方式による取引相場のない株式の評価上、その創り出された評価差額に対する法人税等相当額を控除することはできないとした事例
関連するカテゴリ
関連する裁決事例(相続税法>財産の評価>土地及び土地の上に存する権利)
- 借地権の設定されている土地の評価に当たり、自用地としての価額から控除すべき借地権の価額はないとした事例
- 相続税評価額は審判所が算定した時価を上回っているとして、時価を上回る価額による処分の一部を取り消した事例
- 財産評価基本通達185のかっこ書に定める「通常の取引価額」は、評価会社の帳簿価額よりも鑑定評価書の鑑定評価額によることが相当であるとした事例
- 相続により取得した土地が無道路地であるとの請求人の主張を排斥した事例
- 相続により取得した建物の周囲にある緑化設備は、共同住宅の敷地内に設けられた構築物であるから、財産評価基本通達97の定めにより評価すべきであるとした事例
- 鉄道用地下トンネルを埋設するための区分地上権は相続税法第23条に規定する地上権には含まれないとした事例
- 本件宅地がいわゆる大規模画地(面大地)であるとしても、所在近隣地域の同程度の面積の宅地の売買実例価額と比較してもその評価額は時価を上回るものではないとした事例
- 傾斜度が30度を超える土地であることから財産評価基本通達に定める方式ではなく個別評価が相当である旨の主張を認めた事例
- 相続税の申告期限前に同族法人に対する貸付金の一部が受贈益として確定しているからその部分について回収不能であるとする請求人の主張を排斥した事例
- 上場株式等の現物出資及びその低額受入処理という相続税回避行為に係る非上場株式を純資産価額方式により評価するに当たり法人税等相当額を控除することは相当でないとした事例
- 評価対象地は、道路を開設するなどした開発を行うことが最も合理的であり、広大な市街地農地として評価するのが相当であるとした事例
- 土地区画整理事業地内の評価対象地につき、開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要とは認められないことから、財産評価基本通達24−4(広大地の評価)の適用はないとした事例
- 人格のない社団に対する出資の評価については、企業組合等の出資の評価に準じて純資産価額方式によるのが相当であり、その場合、評価差額に対する法人税等相当額の控除を行うのは相当でないとされた事例
- 評価対象地がマンション適地等に該当する場合には、財産評価基本通達24−4(広大地の評価)の適用はないとした事例
- 被相続人の所有に係る相続人の居住用家屋の敷地は、借地権の目的となっている土地ではなく自用地であるとした事例
- 財産評価基本通達24−4《広大地の評価》に定める「その地域における標準的な宅地の地積」については、河川や山などの自然的状況、行政区域、都市計画法による土地利用の規制など公法上の規制等、道路、鉄道及び公園など、土地の使用状況の連続性及び地域の一体性を分断する場合がある客観的な状況を総合勘案し、利用状況、環境等が概ね同一と認められる、ある特定の用途に供されることを中心としたひとまとまりの地域における標準的な宅地の地積に基づいて判断するのが相当であるとした事例
- 取引相場のない出資を純資産価額方式により評価するに当たり、割賦販売に係る未実現利益の金額は控除できないとした事例
- 贈与財産である取引相場のない株式を純資産価額方式で評価する場合において、当該株式の発行法人が有する営業権の価額は財産評価基本通達の規定により評価することが相当であるとした事例
- 贈与を受けた土地を贈与者に無償で使用させた場合のその土地の評価額は自用地の価額によるべきであるとした事例
- 親子間で使用貸借した土地の相続税評価額は自用地としての価額によるべきであるとした事例
※最大20件まで表示
税法別に税務訴訟事例を調べる
当コンテンツは著作権法第13条(権利の目的とならない著作物)の規定に基づき、国税不服審判所:公表裁決事例要旨と裁判所:行政事件裁判例のデータを利用して作成されています。