農地法施行前に設定されていた農地の賃借権について、賃貸借の効力が生じており、農地法第20条《農地又は採草牧草地の賃借権の解約等の制限》第1項の規定の適用があるから、財産評価基本通達9の(7)の耕作権に該当するとした事例
裁決事例(国税不服審判所)
2006/06/19 [相続税法][財産の評価][土地及び土地の上に存する権利] 財産評価基本通達41の(1)は、耕作権の目的となっている農地については、その農地の自用地としての価額から、同通達42の定めにより評価した耕作権の価額を控除した金額によって評価することとし、耕作権については、農地法第20条第1項の規定の適用がある賃借権に限られるところ、本件農地の一部については、農地法施行(昭和27年10月21日)前から引き続き賃貸されていることが認められる。
農地法施行前における農地の賃借権の設定等に関しては、農地法の前身である農地調整法第5条及び第6条が昭和20年12月29日に改正(昭和21年2月1日施行)され、同法第5条は「農地ノ所有権、賃借権、地上権其ノ他ノ権利ノ設定又ハ移転ハ命令ノ定ムル所ニ依リ当事者ニ於テ地方長官又ハ市町村長ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ効力ヲ生ゼズ」と規定され、同法第6条第3号において、「農地ヲ耕作ノ目的ニ供スル為前条ニ掲グル権利ヲ取得スル場合」は前条の規定は適用しないとされた。次いで、農地調整法第5条及び第6条が、昭和21年10月21日に改正(昭和21年11月22日施行)され、同法第5条の「認可」が「許可」(地方長官)又は「承認」(市町村農業委員会)に改められ、同法第6条が削除されたことによって、以後、賃借権の設定等については許可又は承認が必要とされることとなったが、その施行前に開始された賃貸借は、同法上、この許可又は承認を要することなく有効に成立しているものと解されている。
そして、賃借権の設定等について許可又は承認が必要とされることとなった昭和21年11月22日前に賃貸借された農地の賃借人は、農地法施行後に改めて農地の賃借権の設定等に係る許可を要することはなく、又、その後賃借人に相続が開始した場合には、その相続人は、その賃借権を適法に承継したものと扱われることから、かかる賃借権は、その解約等を行う場合、農地法第20条第1項の規定により都道府県知事の許可が必要であることから、同法の保護を受ける賃借権、つまり、財産評価基本通達9の(7)の耕作権に該当することとなる。
したがって、昭和21年11月22日前に賃貸借が開始された農地については、自用地としての価額から財産評価基本通達に定める耕作権の価額を控除して評価するのが相当と認められる。
平成18年6月19日裁決
- 国税不服審判所:公表裁決事例集:公表裁決事例要旨
- 農地法施行前に設定されていた農地の賃借権について、賃貸借の効力が生じており、農地法第20条《農地又は採草牧草地の賃借権の解約等の制限》第1項の規定の適用があるから、財産評価基本通達9の(7)の耕作権に該当するとした事例
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