請求人の帳簿書類の備付け及び記録の不備の程度は甚だ軽微であり、申告納税に対する信頼性が損なわれているとまではいえないことから、所得税法第150条第1項に基づく青色申告の承認の取消処分は、違法とはいえないものの不当な処分と評価せざるを得ないとした事例
裁決事例(国税不服審判所)
2010/12/01 [所得税法][青色申告の承認、承認の取消し] 原処分庁は、請求人は、原処分庁所属の調査担当職員に、不動産所得に係る帳簿は作成していないとして現金出納帳を提示しなかったことから、現金出納帳を備え付けていないものと認められ、この事実は、請求人の不動産所得に係る帳簿書類の備付けが所得税法第148条《青色申告者の帳簿書類》第1項に規定する財務省令で定めるところに従って行われていない場合に該当するとともに、不動産所得に係る取引を記載した伝票を提示しなかっただけでなく、その存在を明らかにしなかったことから、当該伝票について確認することができず、帳簿書類の備付け、記録及び保存が正しく行われているか否かを判断することができなかったのであるから、同法第150条《青色申告の承認の取消し》第1項第1号に規定する青色申告の承認の取消事由に該当する事実がある旨主張する。
しかしながら、青色申告の承認取消処分を行うか否かの判断に当たっては、所得税法第150条第1項第1号に該当する事実が形式的に存在するか否かだけでなく、請求人の業種業態、事業規模に応じた帳簿書類の備付け及び記録の状況、帳簿書類の提示の状況等の個々の事情をも総合的に勘案し、真に青色申告を維持するにふさわしくない場合に、取消処分を行うべきであるところ、請求人の帳簿書類の備付け、記録及び保存には、同号の青色申告の承認の取消し事由に該当する事実があるとは認められるものの、請求人の帳簿書類の備付け及び記録の不備の程度は、甚だ軽微なものと認められ、また、請求人が伝票のほか、通帳及び領収書等を集計して計算した各年分の所得金額は、十分正確性が担保されていると認められるから、帳簿書類の備付け及び記録の不備により請求人の申告納税に対する信頼性が損なわれているとまではいえない。
また、請求人が自発的に伝票の存在を主張しなかった、又は提示しなかったからといって、直ちに原処分庁が請求人の記帳状況を確認できない状態であったとも認められないことから、これらの事情を総合勘案すると、本件取消処分は、違法とはいえないものの、真に青色申告を維持するにふさわしくない場合とまでは認められないから、不当な処分と評価せざるを得ず、これに反する原処分庁の主張には理由がない。
《参照条文等》 所得税法第148条第1項、第150条第1項 所得税法施行規則第56条
- 国税不服審判所:公表裁決事例集:公表裁決事例要旨
- 請求人の帳簿書類の備付け及び記録の不備の程度は甚だ軽微であり、申告納税に対する信頼性が損なわれているとまではいえないことから、所得税法第150条第1項に基づく青色申告の承認の取消処分は、違法とはいえないものの不当な処分と評価せざるを得ないとした事例
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