遠洋漁業を行う船舶に乗船させた外国人漁船員の人的役務の提供の対価は国内源泉所得に該当するから、当該対価の支払の際に源泉徴収する義務があるとした事例
裁決事例(国税不服審判所)
2006/01/25 [所得税法][源泉徴収] 請求人は、自らが所有し遠洋漁業を行う船舶(以下「本件船舶」という。)に乗船させた外国人漁船員とは雇用契約書を取り交わしておらず、外国人漁船員の手配等を行うH社から派遣されたものであるから、本件船舶に乗船させた外国人漁船員の人的役務の提供の対価(以下「本件対価」という。)は所得税法第161条第8号イに掲げる国内源泉所得に該当せず源泉徴収義務はない旨主張する。
しかしながら、本件船舶に乗船させる外国人漁船員は請求人の意思でその採否を決定していること、請求人は外国人漁船員の船員手帳の交付申請に際し外国人漁船員の雇用(予約)証明書を提出していることなどからすれば、請求人と本件船舶に乗船させた外国人漁船員とが直接の雇用契約書を取り交わしていないとしても、請求人と当該外国人漁船員との間には雇用関係があると認めるのが相当である。したがって、本件対価は、請求人との雇用契約によるものであるから、所得税法第161条第8号イに規定する国内源泉所得に該当する。
そして、請求人は本件対価をH社の国内預金口座に振り込む方法により支払っており、また、外国人漁船員が本件船舶に1年以上の期間乗船していたとしても、本件船舶は当該外国人漁船員にとって勤務地であって住所や居所には該当せず、当該外国人漁船員は非居住者に該当するから、所得税法第212条第1項の規定により、請求人は本件対価の支払の際に源泉徴収義務がある。
なお、本件納税告知処分には、各月分の納付すべき源泉所得税の額及び法定納期限の認定に誤りが認められるが、法定納期限の認定の誤りは、国内源泉所得の支払地が国内か国外かによるものにすぎず、既に自動的に確定している各月分における源泉所得税に係る国税債権に影響するものとは認められず、また、正当な法定納期限後の日付をもって本件納税告知処分をしたことが請求人の利益侵害とも認められないから、当該誤りをもって本件納税告知処分を取り消すことは相当ではないと認められるが、本件納税告知処分のうち正当に計算した本件対価の支払に係る各月分の納付すべき源泉所得税の額を超える部分は違法となり取り消すべきである。
平成18年1月25日裁決
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