経営セーフティ共済とは
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)は、中小企業の経営安定化をはかる共済制度であり、しかも節税効果に優れています。
主な特徴は以下の通りです。
- 掛金月額:5,000円~20万円(掛金総額の上限800万円)
- 掛金全額を損金算入可能
- 加入要件:1年以上事業を営む中小企業者(例:資本金5,000万円以下・従業員数50人以下)。
- 取引先の売掛債権が回収不能時に、最高8,000万円まで無利子融資。
- 40ヶ月以上の掛金納付で、掛金が全額戻ってくる。
- 掛金前納制度あり。1年以内のものは支払った事業年度で損金算入可能。
- 加入手続きは商工会議所か融資取引等のある金融機関の本支店。
- 独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営。
中小機構:倒産防止共済: 経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)
www.smrj.go.jp/tkyosai/index.html 経営セーフティ共済で節税する
例えば、3月決算法人が決算月(2016年3月)に利益を圧縮したいと考えたケースについて考えてみます。
2016年3月31日までに加入手続きを終え、2016年3月~2017年2月分の掛金をまとめて払い込めば、その全額を損金計上できます。掛金が月20万円であれば、240万円(=月20万円×12ヶ月)が一気に損金算入される訳です。1年以内の前納掛金については、払い込んだ期に損金算入されるので使い勝手は非常に良いと言えます。また、後述しますが、掛金を前納すると「前納減額金」というメリットもあります。
掛金月額は月単位で変更可能なので、翌年以降は法人の収益状況や資金繰りを確認しながら、月5,000円~20万円の範囲で1年分を3月に前納することになります。
40ヶ月以降の解約で掛金が全額戻ってきます。よって、資金繰り的には3年4ヶ月我慢すればいいことになります。
ただし、解約時には全額を益金計上しなければなりません。いわゆる「課税の繰り延べ」なのですが、将来的に法人税率が更に低くなる可能性がありますし、資金繰りに余裕があれば検討したい節税方法です。
経営セーフティ共済の事務手続き
加入手続きは、商工会議所や金融機関等で行います。多くの金融機関が窓口となっています。
掛金を損金算入するには、法人税申告時に下記書類を添付することが要件です。
- 特定の基金に対する負担金等の損金算入に関する明細書
- 適用額明細書
経営セーフティ共済の前納減額金で得をする
掛金を前納すると、以下の算式の前納減額金を受け取ることができます。(参考:
制度改正(前納減額率の見直し)のお知らせ|中小企業基盤整備機構)
- 前納減額金=掛金月額×1,000分の0.9×(前納月数の累計)
「前納月数の累計」の部分が少し分かりにくいですが、例えば12ヶ月分(前納分11ヶ月)をまとめて支払った場合の「前納月数の累計」は以下の通りです。
- 66ヶ月=0ヶ月+1ヶ月+2ヶ月+3ヶ月+4ヶ月+5ヶ月+6ヶ月+7ヶ月+8ヶ月+9ヶ月+10ヶ月+11ヶ月
支払い月については前納扱いされないので「0ヶ月」ですが、その他の月は階数的に増加します。よって、月20万円の掛金を12ヶ月分まとめて支払うと、11,880円(=月20万円×1,000分の0.9×66ヶ月)の払い戻しを受けることになります。
単純利回りで0.495%(=11,880円÷(月20万円×12ヶ月))となります。40ヶ月以降は掛金全額が戻ってくることから、3年ものの定期預金と考えられなくもないので、そういう意味では悪くない金融商品と言えます。
なお、中小企業だけでなく、個人事業主も加入可能です。
半年分や1年分の掛金をまとめて払い込んだ場合、割引はありますか。
www.smrj.go.jp/tkyosai/qa/nofu/000110.html 経営セーフティ共済を退職金の原資として節税する
退職金の原資として活用することも可能です。ただし、掛金総額の上限が800万円なので、経営者の
退職金としては物足りないかもしれません。その場合、
少人数私募債との併用を検討します。
金額的に最適だと思われるが、
退職金(従業員の役員昇格)で節税のケースです。特に短期間で「みなし退職」する場合、相性が良い気がします。なお、
退職金(役員の分掌変更)で節税でも同様の節税効果が期待できます。詳しい節税スキームについては、
役員退職金と経営者保険を組み合わせて節税をご確認ください。
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- 少人数私募債で節税する。少人数私募債のメリットや制限、役員退職金の原資、小分けして毎年贈与、信託して元本受益権を贈与、信託した元本受益権を小分けして毎年贈与。