質疑応答事例(国税庁)
【照会要旨】
A社は、B・C・D各社の発行済株式の100%を10年前から保有する親会社です。平成25年4月1日に、B社とC社は、E社を新設合併設立会社とする新設合併(適格合併1)を行いました。この合併はいわゆる「みなし共同事業要件」を満たしますので、E社は、B社及びC社が有する未処理欠損金額を引き継ぎました。
このたび、D社とE社は、D社を合併法人、E社を被合併法人とする吸収合併(適格合併2)を行いました(合併の効力発生日は平成27年6月30日)。この場合、合併法人であるD社は、E社の未処理欠損金額を引き継ぐことができるでしょうか。
なお、適格合併2は「みなし共同事業要件」を満たしません。
【回答要旨】
D社は、E社の未処理欠損金額を引き継ぐことができます。
(理由)
- 1 適格合併が行われた場合に、被合併法人(Y)に未処理欠損金額があるときは、その未処理欠損金額は、合併法人(X)の合併の日の属する事業年度前の各事業年度に生じた欠損金額とみなして合併の日の属する事業年度以後の各事業年度において繰越控除することとされています(法法57、)。
- 2 ただし、合併法人(X)と被合併法人(Y)との間に支配関係がある場合の適格合併であって、いわゆる「みなし共同事業要件」を満たす合併に該当する場合、又はその支配関係が合併法人(X)の適格合併の日の属する事業年度開始の日の5年前の日から継続している場合のいずれにも該当しないときには、被合併法人(Y)の有する欠損金額のうち
- 合併法人(X)との支配関係が生じた日の属する事業年度前の各事業年度に生じた欠損金額
- 合併法人(X)との支配関係が生じた日の属する事業年度以後の各事業年度に生じた欠損金額のうち、被合併法人(Y)が当該支配関係が生じた日において有する資産の譲渡等による損失額から成る部分の金額(特定資産譲渡等損失相当額)
は、上記1の未処理欠損金額に含まれない(合併法人(X)の欠損金額とみなされない)こととされています(法法57、法令112一)。 - 3 なお、被合併法人(Y)が適格合併の日の属する事業年度開始の日の5年前の日後に設立された法人である場合であって、その被合併法人(Y)とその合併法人(X)との間にその被合併法人(Y)の設立の日から継続して支配関係があるときは、上記2の制限措置は適用されず、被合併法人(Y)の未処理欠損金額を引き継ぐことができます(法法57、法令112二)。
- 4 また、上記3に該当する場合であっても、適格合併(適格合併2)の日の前日以前に、その合併法人(X)との間に支配関係がある他の内国法人(y1、y2)を被合併法人とする適格合併(適格合併1)で、3の被合併法人(Y)を設立するものが行われていた場合には、上記3の取扱いはなく、被合併法人(Y)の未処理欠損金額を引き継ぐことはできません(法令112二イ前段)。
ただし、その合併法人(X)と他の内国法人(y1、y2)との間に最後に支配関係があることとなった日が、適格合併(適格合併2)の日の属する事業年度開始の日の5年前の日以前である場合には、この制限はなく、被合併法人(Y)の未処理欠損金額を引き継ぐことができます(法令112二イ括弧書)。
以上を図示すると、次のようになります。 - 5 お尋ねのD社とE社の合併は、適格合併に該当し、被合併法人であるE社と合併法人であるD社との間には被合併法人であるE社の設立の日から継続して支配関係がありますので、D社はE社の未処理欠損金額を引き継ぐことができます。また、D社とE社の適格合併の日の前日以前に、合併法人であるD社との間に支配関係がある他の内国法人であるB社及びC社を被合併法人としてE社を設立する適格合併が行われていますが、B社及びC社とD社との間に支配関係があることとなったのは10年前であり、D社とE社の適格合併が行われた日の属する事業年度開始の日の5年前の日以前ですので、E社の未処理欠損金額の引継ぎが制限されることはありません。
【関係法令通達】
法人税法第57条第1項、第2項、第3項
法人税法施行令第112条第4項
注記
平成27年7月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。
出典
国税庁ホームページ https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/hojin/33/36.htm
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