質疑応答事例(国税庁)
【照会要旨】
甲社(3月決算)は、平成X年10月1日にグループ法人A社の発行済株式を他のグループ法人B社から株式交換により取得し、平成(X+1)年6月にA社株式に対する剰余金の配当を受けました。なお、この剰余金の配当は、平成X年4月1日から平成(X+1)年3月31日の1年間をその計算の基礎としています。
ところで、甲社は、平成(X+2)年3月期の申告において、この剰余金の配当につき課された所得税について法人税法第68条《所得税額の控除》の規定を適用する予定ですが、法人税額から控除する所得税額の計算に当たり、株式交換により取得したA社株式(配当等の元本)については、他のグループ法人B社が所有していた期間についても甲社が所有していた期間とみなして同条を適用することができると解して差し支えありませんか。
なお、甲社、A社及びB社は、連結納税制度の適用を受ける法人ではありません。
【回答要旨】
他のグループ法人B社が所有していた期間について甲社が所有していたものとみなすことはできません。
(理由)
- 1 法人が各事業年度において利子配当等の支払につき課された所得税の額は、その事業年度の所得に対する法人税額から控除することができるとされており(法法68)、この控除する所得税の額は、その元本の所有期間に対応する額、すなわち、課された所得税の額のうち、その計算期間の月数のうちにその元本を所有していた期間の月数の占める割合を乗じて得た金額とするのが原則です(法令140の2)。
(原則的な計算式)
- 2 上記計算式における「元本所有期間」については、適格合併等により利子配当等の元本の移転を受けたときは、被合併法人等がその元本を所有していた期間は合併法人等の所有期間に含める、また、株式移転により設立された株式移転完全親法人が当該株式移転に係る株式移転完全子法人からその設立の日後最初に支払われる剰余金の配当(株式移転後の初回配当)を受けるときは、その株式移転後の初回配当の計算の基礎となった期間の開始の日からその設立の日の前日まで全元本を所有していたものとみなすといった措置が講じられています。
- 3 他方、株式交換により他の法人の株式を取得した株式交換完全親法人が当該株式交換完全子法人からその株式交換後最初に支払われる剰余金の配当(株式交換後の初回配当)については、他の法人が所有していた期間を株式交換完全親法人が所有していたとみなすといった規定はありません。
- 4 したがって、甲社は、株式交換により取得したA社株式について、他のグループ法人B社が所有していた期間を甲社が所有していた期間とみなすことはできませんので、甲社が所有していた期間に基づき、控除する所得税の額の計算を行うこととなります。
【関係法令通達】
法人税法第68条
法人税法施行令第140条の2第1項、第2項、第4項
注記
平成27年7月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。
出典
国税庁ホームページ https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/hojin/23/06.htm
関連する質疑応答事例(法人税)
- 宗教法人が行うテレホンカードの販売
- 特定調停事案における支援者の範囲の相当性、支援割合の合理性
- 役員に対する歩合給(定期同額給与)
- 高層ビルを区分所有した場合の耐用年数
- 圧縮記帳の対象となる交換の範囲
- 社会保険診療報酬の特例計算
- 法人税基本通達9−6−1(3)ロに該当する貸倒損失(特定調停)
- 自社の事務室の蛍光灯を蛍光灯型LEDランプに取り替えた場合の取替費用の取扱いについて
- 医療保健業の範囲(休日・夜間診療)
- 輸入貿易手形借入金の期限延長
- 外国税額控除における国外所得の範囲
- 外国の地方公共団体が課す罰金について
- ゴルフ会員権の預託金の一部が切り捨てられた場合の取扱い
- 当期において累積欠損金を抱えることとなる子会社に対する支援
- 経営権の譲渡に伴う債権放棄による経済的利益の供与
- 短期の損害保険契約に係る保険料を分割で支払った場合の税務上の取扱い
- 短期前払費用の取扱いについて
- 建物の一部分を取得した場合の耐用年数
- リボルビング方式の割賦販売に係る費用・収益の帰属時期
- 中小企業者等が取得をした貨物運送用の小型自動車の中小企業投資促進税制(租税特別措置法第42条の6)の適用について
項目別に質疑応答事例を調べる