請求人が和解により取得した損害賠償金名目の金員に係る所得は、非課税所得ではなく、雑所得に該当するとした事例
裁決事例(国税不服審判所)
2011/12/02 [所得税法][総則][非課税所得]《ポイント》 この事例は、有価証券報告書に虚偽記載をした上場会社の株式を取得した請求人が、その発行会社等を被告として損害賠償請求訴訟を提起し、第一審判決の後に和解により受領した損害賠償金名目の金員について、株式等の譲渡による雑所得の金額の計算上必要経費に算入される金額を補填するためのものであるから、非課税所得とはならない旨、その所得区分は、営利を目的とする継続的行為から生じた経済的利得であるから雑所得に当たる旨判断したものである。
《要旨》 J社の有価証券報告書の虚偽記載に基づき、請求人が所有していたJ社株式(本件J社株式)に生じた損害に対して、J社から和解に基づき支払を受けた本件損害賠償金について、請求人は、本件J社株式の譲渡による所得区分は株式等の譲渡による譲渡所得であることから、所得税法施行令第30条《非課税とされる保険金、損害賠償金等》本文かっこ書の「各種所得の金額の計算上必要経費に算入される金額を補てんするための金額」に該当せず、非課税所得に該当する旨主張し、原処分庁は、請求人の本件J社株式の譲渡による所得区分は、株式等の譲渡による事業所得又は雑所得であり、同かっこ書の金額に該当し、非課税所得とはならず、労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないことから一時所得に該当する旨主張する。
しかしながら、請求人の本件J社株式の譲渡による所得は、営利を目的とする継続的な行為から生じたものであり、株式等の譲渡による雑所得と認められ、本件損害賠償金は、本件J社株式の取得価額の一部を補填するものであることからすると、本件損害賠償金は、請求人の株式等の譲渡に係る雑所得の金額の計算上必要経費に算入される金額を補填する損害賠償金に該当するから、上記の「各種所得の金額の計算上必要経費に算入される金額を補てんするための金額」に該当し非課税所得には該当しないことになるとともに、営利を目的とする継続的な株式等の売買において生じた損害に対する損害賠償金であることから、営利を目的とする継続的行為から生じた経済的利得として、総合課税の雑所得の金額の計算上総収入金額に算入されることとなる。
《参照条文等》 所得税法第9条(平成22年法律第6号による改正前のもの)第1項第16号、第34条、第35条 所得税法施行令(平成22年政令第50号による改正前のもの)第30条 租税特別措置法(平成19年法律第6号による改正前のもの)第37条の10
《参考判決・裁決》 最高裁平成23年9月13日第三小法廷判決(金判1376号33頁)
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