本件各預貯金の差押時点において、本件各差押財産の処分予定価額の合計額は滞納額を下回っていたと認められるが、本件納付告知処分の一部が取り消されることによって、本件各差押財産の処分予定価額が第二次納税義務の限度額を超過する状態になると認められる。
ところで、先行する課税処分と後続の徴収処分との関係については、課税処分が租税確定手続であり、後者が租税徴収手続であって、両者は別個の法律的効果の発生を目的とする別個独立の行為であるから、前者の違法は後者に承継されないと解するのが相当であり、第二次納税義務の徴収手続の場合も同様に、先行する納付告知処分に違法があったとしても、その違法性は当該第二次納税義務に係る国税を徴収するための滞納処分には直ちに承継されないと解するのが相当であるから、第二次納税義務に係る納付告知処分の一部が取り消されたとしても、そのことをもって直ちに当該第二次納税義務に係る国税を徴収するための滞納処分を違法ということはできない。
そして、国税徴収法第79条第2項第1号は、差押えに係る国税の一部の納付、充当、更正の一部の取消し、差押財産の値上りその他の理由により、その価額が差押えに係る国税及びこれに先立つ他の国税、地方税その他の債権の合計額を著しく超過すると認められるに至ったときは、差押財産の全部又は一部について、その差押えを解除することができる旨規定しており、後発的事由により超過差押えとなった場合の違法状態の是正措置が設けられているところ、同号の規定により差押えを解除するか否か、また、解除する場合に、どの財産の差押えを解除するかは徴収職員の合理的な裁量にゆだねられていると解されることからすれば、後発的事由により超過差押えとなった場合に、審判所が差押えを取り消す財産を選択し、当該財産の差押えを取り消すことは許されないと解される。
また、差押えの解除と取消しの法律的効果の相違も考慮すれば、後発的事由により超過差押えとなったとしても、審判所は差押処分の取消しをすることはできないと解される。
したがって、本件納付告知処分は一部を取り消すべきであるものの、これを理由として本件各差押処分の一部又は全部を取り消すことはできない。
《参照条文等》国税徴収法第48条第1項、第79条第2項第1号
平成22年2月16日裁決
※最大20件まで表示
当コンテンツは著作権法第13条(権利の目的とならない著作物)の規定に基づき、国税不服審判所:公表裁決事例要旨と裁判所:行政事件裁判例のデータを利用して作成されています。
*ご利用にあたっては利用規約を必ずご確認ください