滞納者の子である請求人は、原処分庁が差し押さえた株券に係る株式についての真の権利者は請求人である旨主張し、請求人の祖母が請求人に当該株式に係る株券を引き渡した旨記載されている文書が存在する。
ところで、当該原処分庁が差し押さえた株券は、請求人の祖母が、当該株式に係る株券についての除権判決を得るとともに、当該株式を滞納者に譲渡することについて、その発行会社であるC社の取締役会の承認を経た上で再発行された株券が滞納者に交付された後、滞納者が当該再発行株券のすべてを亡失したとして、C社に対してなされた平成20年4月23日付の株券喪失登録の申請に基づき、同社が滞納者に対して発行し、滞納者のために保管していたものであるところ、原処分庁所属の徴収職員が、滞納者がC社に対して有する当該株式に係る株券の再発行請求権を差し押さえた上で、C社が滞納者に対し発行し、滞納者に交付すべきものとして保管していた再発行株券を占有して差し押さえたものである。
そうすると、商法(平成17年法律第87号による改正前のもの。)第205条第2項の規定により、上記再発行株券が滞納者に交付された時点で、滞納者が当該再発行株券に係る株式についての権利を有すると推定され、また、会社法第131条第1項の規定により、当該株式についての権利は滞納者に帰属すると推定されることから、この推定を覆す事実が認められない限り、差押処分に当該株式についての権利の帰属を誤った違法があるということはできないこととなる。しかるに、滞納者が当該株式を祖母から譲り受けたこと及びその後における滞納者による株券喪失登録の申請に不自然な点は見当たらず、滞納者が当該株式についての権利が祖母から請求人に移転していることを知りながら、あるいは、重大な過失によってそのことを知らないままに、当該再発行株券の交付を受けたと認めるべき証拠も見当たらない上、請求人が当該株式についての権利を有していたことをうかがわせる証拠もないから、当該株式についての権利が滞納者に帰属するとの推定を覆す事実は認められず、したがって、請求人が当該株式の真の権利者である旨の請求人の主張には理由がない。
《参照条文等》国税徴収法第56条第1項商法(平成17年法律第87号による改正前のもの。)第205条会社法第128条、第131条、第228条
平成22年6月10日裁決
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