請求人は、滞納処分による債権の差押えに対して、[1]滞納者に対して被差押債権を超える債権を有しているので相殺すべきであること、[2]差押えの前に本件債権を元従業員に譲渡したとする債権譲渡通知書が届き、当該債権譲渡は本件差押処分に先行するから滞納者に対する債務が存在しない旨主張して差押処分の取消しを請求する。
しかしながら、差押処分等の国税に関する処分に対し、審査請求ができる者は、その処分の取消しを求めることに法律上の利益を有する者に限られると解されている。本件差押処分によって、国は滞納者に代わって債権者の立場に立つにとどまり、国と第三債務者たる請求人との関係は、私法上の債権者、債務者という関係にすぎないことになる。
そうすると、請求人が任意に当該債務を履行しない場合は、国は、民事訴訟法に定める手続により被差押債権に係る債務名義を得たうえで、強制執行の手続を踏むほかはなく、請求人は、国が被差押債権取立てのための訴えを提起したときには、当該債務の不存在等差押え前から滞納者に対して有する一切の抗弁を主張して対抗することができるのであるから、債権者が滞納者から国に交代したことに伴い、法律上の不利益を受けることはない。
したがって、被差押債権に係る債務が存在しないことを理由として本件差押処分の取消しを求める本件審査請求は、法律上の利益を欠いた不適法なものである。
平成14年12月4日裁決
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