《ポイント》 この事案は、使用人の詐取行為に係る損害賠償請求権は損失発生と同時に益金算入される(法人税法第22条)、同人の隠ぺい、仮装行為は請求人の行為と同視できず、国税通則法第68条の適用はない、当該使用人の行為は同法第70条第5項に規定する偽りその他不正の行為に該当することから、請求人には同項が適用されるとしたものである。
《要旨》 原処分庁は、請求人の使用人が行った詐取行為における隠ぺい、仮装行為については、当該使用人は勤務する工場の所属課において仕入先から発行される納品伝票の事務処理を事実上一任され、その事務処理をチェックする者が他におらず、当該使用人の指示に基づき仕入先から発行された虚偽の納品伝票の処理が請求人の会計処理として反映される状況にあったこと、当該工場において、取引先から取引実体のない納品伝票を発行させるなど不適切な経理処理が慣行的に行われており、当該使用人による事務処理を請求人自身による処理としてみなさざるを得ない状況にあったものといえることから、当該使用人の隠ぺい、仮装行為は請求人の隠ぺい、仮装行為と同視することができる旨主張する。
しかしながら、当該使用人は、当該工場の所属課に配属されて以後、退社するまで同課において職制上の重要な地位に従事したことがなかったこと及び請求人の経理帳簿の作成等に携わる職務に従事したこともなかったこと等から単に資材の調達業務を分担する一使用人であったと認められること、当該詐取行為は、当該使用人の私的費用を請求人から詐取するために同人が独断で取引先に依頼して行ったものであることを総合考慮すると、請求人が取引内容の管理を怠り、請求人から隠ぺい仮装するための当該使用人の仮装行為を発見できなかったことをもって、仮装行為を請求人自身の行為と同視することは相当ではない。
《参照条文等》 国税通則法第68条、第70条第5項 法人税法第22条 法人税基本通達2−1−43
《参考判決・裁決》 最高裁昭和62年5月8日第二小法廷判決(集民151号35頁) 東京高裁平成21年2月18日判決(訟月56巻5号1644頁)
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