原処分庁は、第一次修正申告書の提出は、国税通則法第65条第5項に規定する「調査があったことにより更正があるべきことを予知してされたものではないとき」には該当しない旨主張する。
しかしながら、請求人は、請求人に対する税務調査の開始日の約4か月半前ころには、経理担当者による横領の事実を把握し、関与税理士に当該事実を報告し、その約半月後には当該横領に係る資料を当該関与税理士に提出して当該横領に関する修正申告書の作成作業を依頼するなどして、納税者本人において、その申告が不適正であることを発見しあるいはその端緒となるべき資料等を把握し、その後、当該関与税理士は、事実関係の確認及び修正申告書の作成作業に時間を要していたところ、当該関与税理士及び請求人代表者は、当該調査の開始日には、調査担当職員が帳簿調査を開始する前に、当該調査担当職員に対し、当該横領資料の写しを交付し、当該横領に係る事実関係を説明し、当該調査担当職員から当該横領の解明作業を当該関与税理士が行うことの了承を得たもので、税務当局の調査着手後、早期の段階において、納税者から修正申告書を提出する旨の申出がなされたということができる。一方、当該調査担当職員は、当該調査の開始前において当該横領につながるような資料は保有しておらず、帳簿調査において、当該横領行為の一部について確認するにとどまり、その全容について確認していなかったところ、当該調査により、当該横領に関する事実関係が新たに明らかになったものはなかったものと認められる。
以上によれば、上記申出を受けた当該調査担当職員は、当該申出に係る部分を除いて調査を行ったものであり、当該調査担当職員の調査により更正がなされることを予知されたと評価すべき事実を認めることはできず、第一次修正申告書は当該調査があったこととは別に自主的に提出されたものであり、調査があったことに基づいて提出されたと認められないことから、更正があるべきことを予知してされた修正申告書の提出には当たらない。
《参照条文等》国税通則法第65条、第68条
平成22年6月22日裁決
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