《ポイント》 この事例は、国税通則法第46条第2項第4号の「事業につき著しい損失を受けたこと」に該当する事実の有無の判定において、納税の猶予は納税者を救済するものであるが、徴収手続における他の納税者との公平の観点から、当該事実の有無は、一定期間における損益計算を行うことによって判定することが相当であり、所得金額が生活費等すら捻出できない利益金額に落ち込んでいる場合には納税の猶予の要件に該当するとの請求人の主張は、法令上の根拠がなく採用できないと判断したものである。
《要旨》 請求人は、請求人の各年分の所得金額及び青色事業専従者給与の金額の合計額から生活費等を差し引いた利益金額がいずれも赤字となるから国税通則法第46条《納税の猶予の要件等》第2項第4号で規定する事実(4号該当事実)がある旨主張するが、請求人の所得金額及び青色事業専従者給与の金額の合計額から生活費等を差し引くという法令上の根拠がなく、独自の見解というべきである。
また、請求人は、昭和51年6月3日付徴徴3−2・徴管2−32「納税の猶予等の取扱要領の制定について」(猶予取扱要領)は、国税通則法第46条第2項第5号で規定する事実(5号該当(4号類似)事実)の有無を判定する比較期間を「従前に比べ」と定めているから、納税の猶予の始期の前日である調査日前1年間(調査期間)の直前の1年間(基準期間)に限定すべきではなく、平成21年分の売上金額は、平成13年分の売上金額と比べて減少した旨主張する。
しかしながら、猶予取扱要領は、4号該当事実の有無の原則的な判定方法として、調査期間と基準期間の損益を比較して判定する旨定め、例外的に、調査期間以内において、資材の高騰等の損失原因があり、損失原因の発生した日の特定ができる場合には、その日以降調査日までの間に生じたと認められる損失金額と基準期間の利益金額のうち損失原因の生じた日以降調査日までの期間に対応する期間の利益金額又は損失金額とを比較して判定しても差し支えない旨定め、これを受けて、5号該当(4号類似)事実について、「従前」と比べて判定する旨定めているのであるから、ここでいう「従前」とは、4号該当事実の原則的な判定方法と例外的な判定方法の基礎となる期間を示していると解するのが相当である。そして、4号該当事実に該当する損失とは、単なる利益の減少ではなく、赤字が生じていると認められる場合のことをいい、5号該当(4号類似)事実とは、著しい損失に類似する事実をいうのであるから、5号該当(4号類似)事実としての売上げの減少等とは、著しい損失と同視できるような売上げの減少等をいい、売上げの減少等があれば全てが5号該当(4号類似)事実に当たるということはできない。また、平成21年分の売上金額の減少については、調査期間の売上金額は基準期間の売上金額より減少しているが、その減少の程度が著しいとは言い難い。
《参照条文等》 国税通則法第46条第2項 昭和51年6月3日付徴徴3−2・徴管2−32「納税の猶予等の取扱要領の制定について」
《参考判決・裁決》 名古屋高裁平成23年5月26日判決(裁Web) 平成22年11月18日裁決(裁決事例集No.81)
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