請求人は、請求人自身も共同相続人の一人であると信じたことにより他の相続人である滞納者の相続税の延納につき請求人所有不動産を担保提供することに承諾する意思表示をしたこと、しかしながら、被相続人と請求人との養子縁組が訴訟により無効とされ遡及的に相続人ではなかったことになったこと、したがって、その担保提供を承諾する意思表示は動機の錯誤により無効であることを主張して、原処分庁がした請求人所有不動産に対する担保物処分のための差押えの取消しを求めている。
しかしながら、請求人の養子縁組の効力については請求人が担保提供に同意する以前から争いがあったことなどの事実の下においては、請求人は、少なくとも、担保提供の承諾の時において自己の相続人としての地位がその争いの帰趨によっては失われる可能性があることを認識していたものと推認するのが合理的である。また、請求人と被相続人との関係が、実体上、養親子関係にないことは、そもそも請求人自身において当然に熟知していたものというべきである。
そうすると、請求人は、本来は相続人でないところ、担保提供の承諾をした当時、相続人でないことの可能性は十分に認識していたというべきであるから、相続人でないのに相続人であると認識していたというような動機の錯誤があったとまでは認めることができないというべきである。したがって、請求人の主張には理由がない。
平成19年3月1日裁決
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