請求人は、租税特別措置法(平成16年法律第14号による改正前のもの。以下「措置法」という。)第66条の4第7項に規定する帳簿書類等とは我が国の納税者が作成・保管することを要求されているものをいい、我が国の納税者が保有していない外国で作成されている資料は、同条第8項に規定する帳簿書類等に該当し、あくまでも入手努力義務があるにすぎないこと、国外関連者との取引価格の算定資料については、同社との取引を独立した第三者間の取引と認識しているため、見積書以外はないところ、当該資料は原処分庁に提出したから、提出すべき資料はすべて提出していること及び請求人が再販売価格基準法及び取引単位営業利益法により算定した独立企業間価格によれば所得移転はないことから、帳簿書類等を請求人が提示又は提出しないことを理由として原処分庁が同条第7項の推定規定を適用して更正をしたことは違法である旨主張する。
しかしながら、原処分庁の調査担当職員が提示又は提出を求めた資料は国外関連者の財務諸表及び国外関連者との取引価格の算定資料であるところ、これらは、独立企業間価格の検討を行う上で基本となる資料であり、国外関連者が有する帳簿書類等であっても、措置法第66条の4第7項の帳簿書類等に含まれるものと認められるから、これらの独立企業間価格の算定に不可欠な帳簿書類等が遅滞なく提示又は提出されない場合には、同項の推定規定の要件を充足すると解される。また、請求人は、請求人が主張する再販売価格基準法が本件における独立企業間価格の算定方法として合理的であると主張するが、当該方法については、取引段階及び取引市場が国外関連取引とは異なっていることから、比較対象取引としての類似性を有するものとは認められず、請求人が加えた差異の調整も、当該差異の調整の算定根拠が不明で、その合理性が認められないから、請求人の主張は採用できない。さらに、請求人は、取引単位営業利益法により計算したところによれば所得移転はない旨主張するが、請求人が用いた方法は、比較可能性を検証する事項についての言及もないまま、単に請求人と国内関連企業2社の計3社の平均連結営業利益率と請求人が競合他社と認識している2社の営業利益率を比較しているものであり、合理性が認められないから、請求人の主張を採用することはできない。そうすると、原処分庁は、請求人から独立企業間価格の算定に必要な帳簿書類等の提示又は提出を受けることができず、他に比較対象取引となり得る取引も見出せなかったことから、本件国外関連取引に係る独立企業間価格の算定に当たって措置法第66条の4第2項第1号イ、ロ、ハ及びニに掲げる方法のいずれも適用することができなかったものであり、当審判所の調査の結果によっても、当該独立企業間価格の算定について当該各方法のいずれも適用することができないと認められる。
したがって、原処分庁が、本件調査により国外関連者の総原価の額を把握し、措置法第66条の4第7項の規定により独立企業間価格を推定したことは適法である。
平成18年9月4日裁決
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