請求人は、本件譲渡資産については、[1]昭和48年に父F所有の甲建物を増築し、当該増築部分を請求人所有の乙建物として登記して、以後これらの建物を一体として居住の用に供しており、また、事実上父母の生活費を負担していたこと、[2]その後、請求人は転勤のため昭和50年以降本件建物に居住できなくなったが、生計を一にしていた父Fは死亡時まで、母Gは本件譲渡時まで本件建物に引き続き居住しており、請求人とその親族は本件譲渡資産を一体として居住の用に供していたのであるから、措置法第31条の3第1項及び第35条第1項の規定による課税の特例を適用すべきである旨主張する。
ところで、居住の用に供していた家屋の敷地である土地については、家屋の所有者と土地の所有者は同一人であることを前提として、居住用財産の課税の特例は規定されているものと解され、また、「居住の用に供されていた家屋等」であっても、居住しなくなった後の一定期間内の譲渡であれば、本件の特例が適用されるのであるが、その要件の解釈に当たっては、いずれも所有者として家屋等を所有している期間において居住の用に供していたことを要するものと解されており、かつて居住の用に供していた家屋等を居住の用に供しなくなった後、当該家屋等を相続により取得して譲渡した場合には、本件の特例の対象となる居住用財産には当たらないと解すべきである。
また、乙建物は、請求人が居住の用に供しなくなった後も、請求人が生活費を負担していたGが譲渡時まで引き続き居住していたことから、居住用財産に該当すると認められるとしても、[1]本件譲渡に係る売買契約書には、本件宅地の公簿面積と建築確認対象面積とに差があった場合には、売買代金の額を本件宅地の面積で除した金額に相当する金額の割合により売買代金を清算する旨の特約が付されていること及び[2]本件建物は買主において取得後すぐに取り壊されていること等からみて、本件譲渡資産の譲渡対価は、すべて居住用財産には該当しない本件宅地の対価であると認めることが相当である。
したがって、本件譲渡資産の譲渡所得金額について本件特例を適用することはできない。
平成10年12月22日裁決
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