請求人は、遺留分減殺請求権を行使して本件土地建物の共有持分12分の1について所有権移転登記(以下「本件登記」という。)をしているが、[1]本件登記は、請求人が遺留分の権利保全を行ったにすぎず、具体的な遺留分額はいまだ確定していないから、本件相続によって請求人が受ける利益は確定しておらず、請求人には本件滞納国税に係る連帯納付義務はまだ発生していないこと、[2]仮に、本件登記をしたことが直ちに「相続等によって得た利益」であり、相当額の受けた利益の価額があるとしても、いまだ具体的遺留分額の最終確定と清算処理がなされていない現時点においては、少なくとも本件土地建物に設定された根抵当権に係る本件被相続人関連債務のうち請求人の法定相続分相当額は請求人の負担として債務控除がなされなければならず、かかる債務控除を一切行わないまま、単純に本件土地建物の持分価額をもって請求人の得た利益と即断して本件督促処分をしていることから、本件督促処分は違法であると主張する。
しかしながら、遺留分減殺請求権の行使は、受贈者又は受遺者に対する裁判外の一方的な意思表示で可能であり、また、その意思表示がいったんなされた以上、法律上当然に減殺の効力が生じるものと解されるところ、本件においては、請求人が遺留分減殺請求権を行使したことにより、本件相続開始時にさかのぼって、本件土地建物の各12分の1の持分を取得したものと認められるから、この点に関する請求人の主張には理由がない。次に、「相続により受けた利益の価額」とは、相続税法第34条第1項が相続税の徴収の確保を図るため、相互に各相続人等に課した特別の責任であるという趣旨に照らせば、相続又は遺贈により取得した財産の価額から相続税法第13条の規定による債務控除の額並びに相続又は遺贈により取得した財産に係る相続税額及び登録免許税額を控除した後の金額をいうと解するのが相当であり、また、相続税法第13条の規定による控除すべき債務は、同法第14条第1項の規定により確実と認められるものに限るとされているところ、本件においては、実際に請求人の負担に属する部分の債務の金額があるとする証拠はないことから、相続税法第13条の規定による確定した債務控除の額はないものと認められ、この点に関する請求人の主張には理由がない。
平成18年6月26日裁決
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