《ポイント》 本事例は、遺留分権利者が遺留分減殺請求の目的物について現物返還と価額弁償とを同時に求めていた場合において、遺留分義務者から現物返還が行われたことは、相続税法第32条第3号の更正の請求事由に当たることなどを初めて明らかにしたものである。
《要旨》 原処分庁は、請求人以外の共同相続人ら(本件遺留分権利者ら)が、遺産である土地(本件土地)について、請求人に対して、遺留分減殺請求訴訟において、価額弁償の請求をしながら、同時に、本件土地について請求人の債務に係る譲渡担保権に基づき所有権移転登記を受けていたK社に対して、共有持分移転登記請求訴訟において、現物返還の請求として所有権一部移転登記手続の請求をしており、K社が当該請求を認諾(本件認諾)したという事実関係の下、請求人が本件認諾を事由としてした更正の請求(本件更正の請求)は、相続税法(平成18年法律第10号による改正前のもの)第32条《更正の請求の特則》第3号事由(遺留分減殺請求に基づき返還すべき又は弁済すべき額が確定したこと)に該当しないものである旨主張する。
しかしながら、本件認諾は、K社が、本件土地に設定されていたK社の譲渡担保権に基づく所有権移転登記について、本件遺留分権利者ら各共有持分10分の1の所有権移転登記手続をすることを認めたものであり、また、本件認諾の前に、請求人が本件遺留分権利者らの遺留分割合が各10分の1であると認めていたことからすると、本件遺留分権利者らは、本件認諾により、本件土地の遺留分に係る各共有持分の登記を回復することができたものと認められる。そして、民法第1040条《受贈者が贈与の目的を譲渡した場合等》第1項本文の規定は、遺留分権利者が、遺留分減殺請求によって目的物を取り戻して登記を回復することができた場合に、これに加えて価額弁償の請求も認めるものと解することはできないことからすると、本件遺留分権利者らは、本件認諾の後本件土地に係る価額弁償を請求することはできないから、本件認諾の日に、本件土地について遺留分に相当する共有持分権を取り戻すことが確定し、これにより、請求人が遺留分減殺請求に基づき返還すべき又は弁償すべき額が確定したというべきである。したがって、本件更正の請求は、相続税法第32条第3号に規定する事由に該当するものである。
《参照条文等》 相続税法第32条第3号
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