《ポイント》 この事例は、共同相続人の総意により特定非営利活動法人に寄附された遺産中の財産は、共同相続人間で法定相続分の割合で分割されたとみるのが相当であり、その分割の前後で更正の請求をした者の課税価格は異ならないことなどから、当該更正の請求は相続税法第32条第1号の要件を満たしておらず、これを前提とした同法第35条第3項の規定に基づいて行われた増額更正処分は違法であると判断したものである。
《要旨》 原処分庁は、本件相続財産の遺産分割に係る和解成立を内容とする民事調停法上の決定(本件民事調停決定)がなされたことを基因として請求人以外の共同相続人から提出された各更正の請求(本件各更正の請求)は、相続税法第32条《更正の請求の特則》第1号の事由に該当する適法なものであるから、請求人に対して同法第35条《更正及び決定の特則》第3項の規定に基づき行った本件更正処分は適法なものである旨主張する。
しかしながら、相続税法第35条第3項の規定に基づく更正処分が適法になされるためには、前提として、他の共同相続人につき、同法第32条の規定による適法な更正の請求に基づく(減額)更正処分が行われなければならず、当該更正の請求が同条第1号に基づくものである場合には、まず、同条第55条《未分割遺産に対する課税》の規定に基づいて、未分割財産について、民法の規定による相続分の割合に従って課税価格が計算されていること、次に、当該未分割財産が分割されたこと、そして、当該分割の結果に従って相続税の課税価格を計算すると上記の課税価格と異なることとなったこと、という要件をいずれも充足する必要があるところ、本件各更正の請求についてみると、本件相続財産のうち、本件民事調停決定によりW会が取得することとなった財産(W会財産)以外の財産については、そもそも同法第55条が適用されていないから上記の要件を満たさず、また、本件相続財産のうちW会財産については、同条の規定に基づいて法定相続分で課税価格が計算されており、本件民事調停決定をもって分割されたと認められるから、上記及びの各要件を満たすものの、本件民事調停決定によって法定相続分で分割されたとみるのが相当であるから、上記の要件を満たさない。したがって、本件各更正の請求は、相続税法第32条第1号の事由に該当しない不適法なものであるから、本件更正処分は、同法第35条第3項の要件を満たさない違法なものである。
《参照条文等》 相続税法第32条、第35条第3項
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