請求人は、遺産分割に係る訴訟上の和解が成立した場合において、相続税法第32条に規定する「事由が生じたことを知った日」は、各当事者に対する和解調書の送達日であるから、その翌日から4月以内にした本件更正の請求は適法である旨主張する。
しかしながら、訴訟上の和解とは、民事訴訟の継続中に裁判所で当事者が訴訟物である権利関係の主張について相互に譲歩することにより、訴訟を終了させることを約する民事訴訟法上の合意をいい、当事者双方が裁判官の面前で和解条項を確認し、これを双方が受け入れて、初めて成立するものである。そして、訴訟上の和解が成立すれば、これを調書に記載しなければならず、調書が作成されたときには確定判決と同一の効力が発生し、調書作成前に当事者が未だ調書が作成されていないことを理由に和解の効力発生前であるとして和解内容を変更することは許されていない。また、当事者に対する調書の正本の送達が意味をもつのは、具体的給付義務等が記載されているときに和解調書に基づき債権者が強制執行する場合であって、送達の有無は、和解の成立又は効力発生とは無関係といわざるを得ない。
以上から、相続税法第32条に規定する「事由が生じたことを知った日」は、当事者が合意して和解が成立した日と解すべきであり、本件更正の請求は期限後になされた不適法なものである。
平成10年8月6日裁決
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