本件貸付金については、財産評価基本通達の定めに基づいて評価するのが、相当であるところ、本件会社について、同通達205の(1)から(3)までに該当する事由は認められないことから、本件貸付金の全部又は一部が、本件相続開始日において、同通達205に定める「その他その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるとき」に該当するか否かについて、本件会社の資産状況及び営業状況等に照らし判断すると、次のとおりである。 本件会社は、本件相続開始日以降、現在に至るまで存続し、従業員のうち障害者を関係グループ会社であるK社に出向させ、主にK社からの出向料及び国等からの助成金により、営業外収益を計上している。また、本件会社は、事業目的を不動産の売買等に拡大した後、平成14年7月期に地方裁判所の競争入札に参加していること、及び平成17年7月期において、不動産取引による売却益として39,120,000円を計上していることからすれば、本件会社の営業が停止していたとは認められない。 そして、本件会社は同族会社であり、関係グループ会社の代表者も本件相続人又はその親族らであり、本件会社の借入金債務は、K社、本件被相続人及びその親族からの債務が大半であって、返済期限等の定めがないため、直ちに返済を求められる可能性は極めて低く、金融機関等外部からの借入れに比べて有利といえ、現に、本件会社は、関係グループ会社との間で頻繁に貸借を行い、特にK社との間では、常時貸借が存在し、時々に応じて返済していた事実が認められる。 さらに、本件相続開始日において、本件会社のU銀行及びV銀行に対する借入金債務残高は零円となっている上、L銀行に対しては、月々500,000円の返済を続けており、同銀行は、返済期限をはるかに過ぎている債権であるにもかかわらず、積極的な債権回収の動きをしていない。本件被相続人からの借入金についても、本件相続開始日の直前に、合計約20,000,000円を返済している。
以上のことから、本件貸付金については、本件相続開始日において、財産評価基本通達205に定める「その他その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるとき」、すなわち、本件会社の事業経営が破たんしていることが客観的に明白であって、債権の回収の見込みのないことが客観的に確実であるといい得る状況にあったとは認められない。
平成21年5月12日裁決
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