財産評価基本通達では、貸宅地の価額は、借地権価額控除方式により評価するとしているが、この評価方法は、借地権の取引慣行のある地域では、底地価額は、単なる地代徴収権の価額にとどまらず、むしろ将来、借地権を併合して完全所有権とする潜在的価値に着目して価額形成されているのが一般的であると認められ、このような場合には、底地価額を借地権価額控除方式により評価するのが相当であると考えられることなどによるものであると解される。この評価方法は、相続税法第22条の趣旨及び財産評価基本通達の考え方に照らし、当審判所においても合理性を有するものと認められるから、請求人らの「宅地上の借地権の価額と貸宅地(底地)の価額との総和は自用地としての価額よりも低い水準にとどまるものであるから、評価基本通達が定める借地権価額控除方式により算定した価額を時価とするのは相当ではない」との主張は相当ではない。
また、請求人らは、本件鑑定評価が収益還元方式による収益価格と底地取引事例から決定した底地権割合により求めた試算価格を加重平均する評価方法が合理的な評価方法であると主張する。
しかしながら、収益還元方式は、標準化された適正な「純収益」を用いて、これを適正な「還元利率」で還元する必要があるところ、一般に、収益還元方式による土地の価額の測定においては、「純収益」の標準化や、「資本還元率」の設定に当たり、その客観的、理論的な算定方法も見いだし難い状況にあるものと認められ、本件鑑定評価においても、その根拠は示されていない。
さらに、借地権割合については、原処分庁において、長年にわたり、借地権の売買実例価額、精通者意見価額等を基として評定され、公開されているものであるから、一定の地域における借地権の実勢価額を反映しているものと考えられるが、本件鑑定評価において収集した取引事例には底地割合にかなりのばらつきがあるということから、取引事例から求められた底地割合が、その地域の底地の実勢価額を反映し得るほどの指標性をもつものとは認め難いと言わざるを得ない。
以上のことから、請求人らの主張する評価方法には、相続税法第22条の趣旨及び財産評価基本通達の考え方に照らして、いずれも合理性を有するものとは認めがたい。
平成15年9月2日裁決
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