《ポイント》 本事例は、請求人が被相続人と生前締結した建物売買契約(売主:請求人、買主:被相続人)に伴い被相続人に生じた売買代金相当額の債務について、当該債務のうち、当該建物の経済的価値(評価通達に基づき算出された評価額)を超える部分は、いずれ混同により消滅させるべき債務を、いわば名目的に成立させたにすぎず、相続開始日現在における消極的財産価値を示すものとはいえないため、相続税の債務控除の対象となる「確実と認められるもの」には該当しないとしたものである。
《要旨》 請求人が、被相続人と生前に締結した売主を請求人、買主を被相続人とする建物売買契約に伴い被相続人に生じた売買代金相当額の債務(本件債務)は、真正に成立した処分証書が存在し、法的に履行が強制されることから、その全額が相続税法第14条第1項に規定する「確実と認められるもの」に該当する旨主張するのに対し、原処分庁は、本件債務は履行を予定していないことから、その全額が「確実と認められるもの」には該当しない旨主張する。
しかしながら、本件債務の発生原因となった建物売買契約は、建物の売買金額と相続税評価額との間に生じる差額により相続税の軽減効果が期待できるとの提案があった上で締結されたことからすると、本件債務のうち、売買対象となった建物(本件建物)の経済的価値(評価通達に基づき算出された評価額)に相当する部分については、相続開始日時点における債務としての消極的経済価値を示しているものの、本件建物の経済的価値を超える部分については、いずれ混同により消滅させるべき債務を、いわば名目的に成立させたにすぎないのであるから、相続開始日時点における債務としての消極的経済価値を示すものとはいえない。したがって、本件債務のうち、本件建物の経済的価値に相当する部分については、相続税法第14条第1項に規定する「確実と認められるもの」に該当するものの、本件建物の経済的価値を超える部分については、「確実と認められるもの」には該当しない。
《参照条文等》 相続税法第14条第1項、同法第22条
《参考判決・裁決》 最高裁昭和49年9月20日第三小法廷判決(民集28巻6号1178頁)
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