裁決事例集 No.18 - 109頁
原処分においては、兄が相続財産として取得した本件土地の2分の1を、その後、弟である請求人が贈与を受けたものと認定しているが、[1]本件土地について、兄を単独相続人とする旨記載した本件遺産分割協議書には、他に建物、借地権、山林、株式等があるにもかかわらず、本件土地と当該建物のみを遺産分割の対象物件とし、当該物件を相続しないものとした請求人に対して他の遺産を分割することを記載しないなどのその記載内容が極めて不自然であること、[2]本件遺産分割協議書が作成された当時、請求人は自己の実印を兄の経営する会社の金庫に預けており、兄はこれを容易に使用し得る立場にあったこと等が認められ、さらに、本件土地の相続を原因とする所有権移転登記に係る裁判(請求人からの訴えに基づくもの)における請求人、兄及び請求人の叔母の供述等を総合して考えると、本件遺産分割協議書は、兄が借入れの際本件土地に抵当権設定の必要が生じたため、請求人に無断でこれを作成したものであり、これにより本件土地につき兄名義で所有権移転登記をしたものというべきである。
したがって、兄は遺産分割により本件土地の全部を単独所有した事実はなく、その持分の2分の1を請求人に贈与した事実もあり得ないことになる。
昭和54年5月4日裁決
※最大20件まで表示
当コンテンツは著作権法第13条(権利の目的とならない著作物)の規定に基づき、国税不服審判所:公表裁決事例要旨と裁判所:行政事件裁判例のデータを利用して作成されています。
*ご利用にあたっては利用規約を必ずご確認ください