請求人らは、被相続人が相続時点で有していた権利は、返還請求権を含む入居一時金ではなく、老人ホームの施設を終身利用できる権利であり、また当該権利は、相続も譲渡もできない権利であり、民法上の相続財産には該当しない一身専属権であるから、相続税法第2条に規定する本来の相続財産には該当しない旨主張する。
しかしながら、被相続人らが締結した老人ホーム入居契約は、入居者である被相続人らの自由な意思によりいつでも契約を解約でき、契約が解約された場合には返還金として契約に定める所定の金員を支払う特約付であったことが認められること、また、契約において入居一時金等の一部を返還することとしているのは、専用居室の家賃及び共用施設の利用料の前払分のほか各サービスの費用並びにサービスに要する事務費及び人件費の前払分として無利息の預り金としてN社(施設設置者)が受け取ったものであることにかんがみれば、被相続人らには、入居契約の締結日時点において、契約に定める老人ホームの居室等を終身にわたって利用し、各種サービスを享受する権利とともに、同人らの死亡又は解約権の行使を停止条件とする金銭債権が生じていると認めるのが相当である。
そして、当該金銭債権は、金銭に見積もることができる経済的価値のある権利として本来の相続財産に該当し、一身専属的権利とはいえないから、請求人らの主張は採用できない。
平成18年11月29日裁決
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