《ポイント》 本事例は、報告文書の中でも実質的証拠力が高いとされている領収書等について、それに記載されたとおりの事実が存在しない理由を説示した上で、当該領収書等の実質的証拠力を否定したものである。
《要旨》 本件有限会社の出資(本件出資)のうち被相続人が有していた口数につき、請求人らは、被相続人は当初500口を有しており、その後、被相続人の先妻の有していた300口のうち150口を法定相続し、さらに、二女に50口を譲渡した結果、被相続人が相続開始時に有していたのは600口であった旨主張し、他方、原処分庁は、本件有限会社の定款及び家庭裁判所に提出された後見事務報告書等によれば、被相続人が相続開始時に有していたのは900口である旨主張する。
しかしながら、真正に成立したと認められる被相続人の先妻の遺産に係る遺産分割協議書によれば、被相続人の先妻が有していた本件出資は330口であり、この全部を被相続人が相続したものと認められること、また、旧有限会社法第19条《持分の譲渡、社員の先買権》第2項によれば、社員がその持分の全部又は一部を社員以外の者に譲渡する場合には社員総会の承認が必要であって、この手続を欠く譲渡は無効であるところ、請求人らの主張する上記譲渡の当時、二女は当該会社の社員ではなく、また、同社において社員総会の承認がなされたと認めるに足りる証拠は見当たらないことからすれば、被相続人が二女から50口分の金員を受領した旨の記載のある領収証の存在をもって、被相続人が二女に50口を譲渡したと認めることはできない。他方、原処分庁が主張する定款及び後見事務報告書等に記載されている900口には、被相続人が請求人らから70口を譲り受けたとする口数が含まれていると認められるところ、当該譲受けを認めるに足りる証拠はない。以上によれば、相続開始時において被相続人が有していた本件出資の口数は、当初有していた500口と先妻から相続した330口の合計830口と認められる。
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