請求人らは、被相続人の借地権が存する土地の所有権を請求人Fが取得したことに伴い、借地権者の地位に変更がない旨の申出書(以下「本件申出書」という。)を提出した土地(以下「分筆前土地」という。)について、被相続人がその土地上に所有していた建物A及びBを老朽化のため取り壊した後の土地は、請求人Fが自由に使用収益してよいとする合意の下で、当該建物が取り壊されたことに伴い、本件借地権が被相続人から請求人Fに無償で返還されたものであるから、本件借地権は存在しない旨等主張する。
しかしながら、本件借地権が返還されたとする請求人らの主張は、請求人Fが被相続人から建物取壊し後の土地を自由に使用するよう言われたことに基づくもののみであって、具体的に明らかでなく、上記発言の内容からは、被相続人が本件土地の使用権利者(借地権者)であることを前提として、請求人Fに本件借地権を自由に利用してよいとも解されるから、被相続人は請求人Fに本件借地権を使用貸借により転貸する趣旨で発言したとも認めることができる。
また、本件申出書を提出していることから、その当時、被相続人及び請求人Fは、分筆前土地に係る借地権を移転する意思はなかったものと認められる上、建物が朽廃していない本件において、借地上の建物を親族間で所有名義を変えて建て替えた場合には、従前の借地権を維持するならばこの借地権を使用貸借により転貸したとみるのが一般的であるし、転貸が使用貸借である場合には、使用貸借通達2によって贈与税の課税も生じないのであるから、このように被相続人が請求人Fに本件借地権を使用貸借により転貸する行為は、親族である貸借当事者間での合理的な行為といえる。さらに、被相続人及び請求人Fは、分筆前土地上の建物Dを平成12年に取壊した後の土地の一部を譲渡したことによる譲渡所得の申告において、被相続人に借地権が存在していたとしている。
そうすると、被相続人が、請求人Fに対して本件借地権を返還するという意思があったとは認められず、また、本件借地権が返還されずに存在していたことを推認させる事実はあるが、本件借地権を返還したとみるべき事実は見当たらない。
そして、被相続人及び請求人Fは、連署で本件申出書を提出しているから、貸借当事者間で借地権が土地所有者に返還されたなどその借地権が存在しないとの主張が認められるのは、贈与税の申告又は借地権の消滅の対価を土地所有者が借地権者に支払った事実が存するなど、当該借地権が存在しないことを外形上明確に示す特段の行為の存在が立証されることが必要であると解すべきであるところ、請求人Fは建物A及びBの取壊し又は建物Cの建築を理由とした贈与税の申告をしておらず、その他本件借地権が存在しないことを外形上明確に示す特段の行為の存在を認定できる証拠もない。
以上のことからすると、本件相続開始日において、被相続人に係る相続財産として本件借地権が存在していたと認めるのが相当である。
平成18年12月22日裁決
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